本コンテンツへスキップ
02_Elements/Icons/ArrowLeft 戻るインサイト
インサイト>デジタル&テクノロジー

同時配信がもたらす動画市場の変化

1分で読めるシリーズ|2020年2月

ここ数年にわたり、デジタルコンテンツ消費の加速化につれて、「若者のテレビ離れ」が話題になっています。

そのような中で、オンライン上でテレビコンテンツが視聴できる「TVer」」 は、配信サービスの利用者は順調に増加し、各テレビ局は、オンラインでの同時配信を開始すると、発表しました。

日本でも消費者はマルチスクリーンでのコンテンツ視聴にシフトしていますが、このようなサービスは消費者のメディア視聴にどのような変化をもたらすのでしょうか?


同時配信がもたらす動画市場の変化

(ニールセン デジタル アナリスト コヴァリョヴァ・ソフィヤ)

オンラインでのコンテンツ提供は、テレビ視聴時間を奪うのか?

テレビコンテンツを提供する企業にとって、オンライン上で同時配信することでテレビ放送の時間が減ってしまわないか、といったことが懸念されます。

まず、オンライン上の配信が消費者のメディア視聴行動にどのような影響を及ぼすのかを把握するために、日本よりも動画配信サービスが浸透している米国のメディア視聴状況に注目したいと思います。

米国のメディア視聴動向をまとめているトータルオーディエンスポートによると、米国の消費者のメディア接触時間は2018年から1時間24分増加し、1日約12時間はいずれかのメディアに接触していることが分かります(図表1)。スマートフォンが視聴時間全体の伸びを牽引している状況です、18歳以上の消費者ではテレビでの視聴時間が長く、重要なメディアであることに変わりないことが分かります、特に動画視聴ではテレビの利用時間が最も多く、1日約4時間となっていました(図表2)。

消費者は新しいメディアに惹かれること、有料動画サービス、無料の動画サービスの浸透が進むにつれて、日本においても米国市場のようにメディアの断片化が進むことが予想されます。

同時配信がもたらす動画市場の変化
同時配信がもたらす動画市場の変化

同時配信でテレビコンテンツのリーチを拡大

では、オンライン上でテレビコンテンツを配信することが、テレビ視聴の減少につながらない場合、日本国内ではどのような変化に期待できるのでしょうか?

同時配信を開始することで、テレビのコンテンツテレビ・デバイスのない環境でリアルタイムに視聴することが可能になります。

スポーツ以外のコンテンツでも、通勤中に朝のニュース番組を視聴する、お昼の休憩で昼の番組を視聴することなどが可能になります。日本のクオリティの高い無料コンテンツに対してニーズが高い市場では、テレビコンテンツオンラインで同時配信することで、テレビデバイスが環境にない消費者を取り囲むことが可能になり、テレビコンテンツのリーチ拡大が期待できます。

ターゲットに合わせたコンテンツ提供が重要

オンラインで提供されるコンテンツの量が同時に増えること、消費者のニーズにあったコンテンツを提供することの重要性が高まること、オンライン上でテレビのコンテンツを配信することは、サービスを提供するプラットフォームが増えるだけで、需要を拡大することは不十分です。

有料動画サービスにおいては、多くの消費者は自身のニーズにあったひとつのサービスを選択する傾向があります。

日本では無料のテレビ放送が充実しており、無料で動画を視聴することが主流になっていますが、年々動画サービスの利用者が増加し、昨年の12月には1,000万人を超える規模にまで拡大しました。それは無料で視聴できるコンテンツが豊富にある一方で、お金を払うことでも有料動画アプリで自分の好みのコンテンツを素早く探し出すことの価値を感じている人が増加していることを意味します。

参入企業が増えるにつれて、動画市場においては消費者の可処分時間の奪い合いが激化することが予想されます。動画コンテンツを提供する企業やテレビ局は、消費者の可処分時間を獲得するためにも、消費者の動向や市場全体の動きを正確に把握し、それをもとにPDCAサイクルを回していくことが一層重要になるでしょう。

類似のインサイトを閲覧し続ける