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マスマーケティングに頼らないTESLAは成長を続けられるか?
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マスマーケティングに頼らないTESLAは成長を続けられるか?

Kendall Smith

かつて「成功はより多くの仕事を生み出す」と語った賢人がいました。そして、Teslaがマスマーケティングにコミットするならば、Teslaの驚くべき業績はさらに拡大するでしょう。 今、電気自動車分野での競争が激化しようとしています。

親愛なるTesla様

御社の最新型超高速モデル「Model S Plaid」がプレスから高評価を獲得、特にウォールストリート・ジャーナル紙のダン・ニール氏が「技術的な大傑作」と評価されたとのことについて、おめでとうございます。0-60mph (約0- 96km/h)を僅か2秒で加速、わずか 15分の充電で 187マイル(約 300km)の距離が走行可能など数々の自動車メーカーが達成できなかった技術を実現したことは、本当に見事です。

しかしながら、気になることがあります。Teslaが自動車業界における世界的なステークホルダーとなるためには、現状と未来像の間に大きなギャップがあると思うのです。Teslaのライバル企業は今後3年間、60以上のEVモデルを市場に投入する計画を立てています。これは5つのモデルから成るEVラインアップを持つTeslaにとって、競争の激化を意味します。そこで 2022年以降、EVという戦場がどのように変化するかを考えることが得策だと思われます。

BMW、トヨタ、メルセデス・ベンツなどのブランドは、広告で展開するイメージやキャッチコピーを通じて、継続的に消費者の共感を獲得しています。BMWの「The ultimate driving machine」、トヨタが米国で展開している「Let’s go places」などが代表的な例と言えるでしょう。これらのキャッチコピーは、長年のブランド構築施策や認知構築キャンペーンにより、多くの消費者に認知されています。数億人規模の消費者の意識上で「馴染みがある」存在になるためには、時間がかかります。各自動車メーカーはマーケティングや広告に大規模の投資を行っており、景気に左右されずに一定の投資を維持することで、「継続は力なり」を実践しています。

対してTeslaの広告投資は少なく、ブランドアイデンティティを確立するまでに至っていません。事実、Teslaは直近の規制当局への年次報告書では、伝統的な広告を意図的に避けていることを繰り返し強調しています。

「メディアでの報道や口コミが、現在のTeslaの見込み顧客発掘の主な原動力であり、伝統的な広告なしに販売を達成するのに役立っています…」

勿論、消費者はTeslaの技術的な優位性に精通しています。熱狂的なクルマ好きは皆、Teslaのドライビング体験や技術的な進歩に大きな魅力を感じています。Teslaファンは一様に空を見上げ、打ち上げが成功したイーロン・マスク氏のSpaceXが宇宙旅行という新たなビジネス領域で何を達成するか、想いを馳せていることでしょう。

これらのファンが理解していないのは、Teslaが事業を行う理由、すなわちマーケティングの中心的な教義の 1つである存在理由ではないでしょうか。この教義は、サイモン・シネック氏が提唱するモデル、The Golden Circle のプレゼンテーションで語った「消費者は、ブランドが何をするかは気にしない。消費者は、ブランドが何をするかではなく、なぜそれをするのかを気にする」という一言に集約されています。

Appleは、ジョージ・オーウェルの有名な小説にかけた「1984」というタイトルのテレビスポットを1984年のスーパーボウル中継番組中に流し、同社の「存在理由」を明快に伝達しました。番組中に 1回だけ流れたコマーシャルでは、Appleのブランドアイデンティティがメッセージとして訴求されました。同社の「チャレンジャー」というアイデンティティに基づく広告により、広告を制作した Chiat Day社のリー・クロウ氏は、広告業界におけるスタークリエイターの座を獲得しました。

Teslaの戦場が間もなく大きく変化することを鑑みると、Appleの事例は視点を提供すると言えるでしょう。Teslaの多くの競合自動車メーカーは、時間をかけて反撃を計画している上に、世界で最も有能なマーケティング担当者を抱えています。さらにはマーケティングのメカニズムが確立されており、自動車購入者の意識に消すことができない印象を与えるノウハウを持っています。

もっと証拠が必要ということでしたら、米国における自動車販売台数とTeslaの現在のポジションを見てみましょう。2020年(1-12月期)、Teslaの販売台数ランキングは 13位で、Jaguar/Land Rover をかろうじて上回っていますが、マツダの販売台数を下回っています。ちなみに、マツダもマスマーケティングに多くの投資を行っていませんでした。

Nielsen Ad Intelのデータによると、自動車業界全体の2019年広告費は110億ドル超、新型コロナの感染が拡大した昨年でも、業界全体で73億ドルを広告に投資しています。業界全体で進行しているEV計画を考慮すると、EVを投入する各メーカーは今後、メディア投資の多くをTeslaからシェアを奪取するために費やすでしょう。 

Teslaのように優れた技術力を持つ自動車メーカーが世界シェアを拡大するためには、何をしたらよいのでしょうか?恐れながら、以下に幾つか提案したいポイントをまとめます。

  1. 御社のCMOに対し、マーテックへの投資をお願いする:例えばマルチタッチアトリビューションを採用すれば、インプレッションをコンバージョンに変換する上でのインサイトが明らかになり、結果により貢献する広告メディアを特定することが可能になる。DMPに投資して、ファーストパーティデータをサードパーティデータと共にアクティベーションすることで、リーチやインパクトの拡大が期待できる。ROI分析を実施して最良のターゲットオーディエンスを特定し、これらのオーディエンスが購入した自動車モデル、下取りに出したモデルを把握すると共に、Teslaの販売ドライバーを理解する。
  2. 広告インパクトのあるイベントの開発:Teslaというブランドにふさわしい会場にて、2分の長尺ブランド動画を発表する。スーパーボウルでも構わないが、Teslaの中心的価値を広めるには、より良いやり方があると思われる。これは前述した Simon Sinek の「なぜ」の精神に関連する。2022年アースデイにテレビのプライムタイム枠でのコマーシャル放送を計画して人類と地球の関係を祝い、音楽アーティストの演奏でメッセージを強化すると同時に、会場に地球の守護者(エコなイノベーションを推進する専門家など)を勢ぞろいさせる。イベントを単独で制作すれば、イベントにおける競合他社の広告を排除することができる。あるいは Netflixでイベントをストリーミング配信し、Netflix初となる広告を配信する。
  3. 一貫したメッセージの開発:上記の広告インパクトのあるイベント開催後、ブランドアイデンティティのコミュニケーションを開始、訴求を維持してブランドへの共感に関する KPIを用いて結果を計測する。消費者が有名な砂糖入り炭酸飲料を 100年間、平然と飲み続けているのには理由がある。Coca-Cola は、一貫した広告を永続的に打ち続けている。

伝統的な自動車メーカーは、自らのブランドエクイティを強調することでロイヤルティを高めることができます。新規顧客を獲得するための費用と比べると、既存顧客による買替の方が、はるかに効率が良いからです。オーガニックに顧客を維持することは、メーカー企業の市場シェアの維持につながります。また新たな EVモデルをローンチする際には、Teslaが新モデルを開発する過程で達成した技術的進歩をメッセージに含めることをお薦めします。受賞歴、JD Power などの第三者評価も強調しましょう。必要ならば、短期的な利益を犠牲にして、Teslaの業界リーダーポジションを強固にする、新たな EVイノベーションに投資することも考えられます。Teslaのような業界の既存の秩序やモデルを破壊し、大きな市場シェアを獲得した後、守勢に回るというシナリオは稀ですが、上位ファネルのマーケティング戦術に全力を注ぐ企業は、これを行わない企業を凌ぐことは確かです。