Cookieless時代のマーケターに求められるスキルとは
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Cookieless時代のマーケターに求められるスキルとは

Nielsen Digital Shiro Takagi

今日のマーケター、特にデジタルメディアを取り扱っているマーケターにとっては、コロナ禍における消費者のメディア消費状況の変化を捉えることも重要ではありますが、一方で、変化し続けるプライバシー問題に関わる規制の強化に対応することも重要な課題となっています。海外において個人情報保護規制が強化され、また日本国内においても個人情報保護法の改正が来年に控えていますが、モバイルのOSやブラウザにおけるデジタル識別子の規制の強化はすでに始まっており、マーケターとしては今現在対応しなければいけない喫緊の課題と言えます。

このように環境が変化してきたことで、デジタルに関わるマーケターにとっては、新しい広告の効果測定ツールや新しい広告の配信方法を検討する必要性がでてきており、加えてこれまでどおりはユーザーの個人情報に関連したデータを収集できないケースもでてきます。そのため、タグにより収集できるログデータや定量的なアンケート調査結果などの様々なデータを組み合わせて、今までとは違ったデータセットや方法をもとに意思決定を行っていく必要があるため、新しいスキルを身に着けていくことも求められています。そこで、これからのデジタルマーケティングに関わるマーケターに求められるスキルとその背景について考えたいと思います。

デジタル識別子に対する規制による影響は既に発生している

まず、改めて現状マーケターが置かれている環境について整理すると、個人情報保護のための法整備は欧州のGDPR、アメリカ合衆国カリフォルニア州におけるCCPAがすでに施行されています。そうした流れを受けて、ブラウザ側でのサードパーティークッキー利用に対する規制や端末側での広告識別子の取り扱いに対する規制が、既にプラットフォーマーにより開始されています。こうした規制により、一部のユーザーに対しては識別子が取得できなくなった結果として、これまでできていた以下のようなことができなくなっています。

・同じ識別子のユーザーが過去にどのようなサイトを閲覧していたのか特定

・同一人物であるという判定

このため、自社製品のページへアクセスしてくれたけど購入に至らなかった人に対して、リターゲティングして購入サイトへ誘導することや、特定のサイトを閲覧していて自社商品の購入の可能性のある人に対してターゲティングして広告を配信することができない消費者が増えてきています。また、それ以外にも、デジタル識別子で同一人物であるという判定ができないので、フリークエンシーキャップをかけていたとしても安心はできません。たとえば、デジタル識別子が取得できている場合は同じ人に対して適切な接触回数で制御ができる一方で、ブラウザの制御でサードパーティークッキーが常にリフレッシュされる、または、OSの規制で広告識別子の判定ができない場合は、一定期間が経つとまだ広告が配信されていない人として認識されるケースがでてきます。そのため、既に広告が一定回数配信されている人にも再度広告が配信されてしまい、過剰に広告が配信されてしまう可能性があります。こういった問題は、貴重な広告費が無駄になるという効率化の問題にも関わりますが、既存顧客が不快な思いをするなどブランドイメージの毀損にもつながります。また、こうした配信面の問題に加えて、効果測定の面でも、デジタル識別子に過度に依存していると同一人物がクリックをしてくれたのか、クリエイティブに共感していたのかを判定できない人がでてくるために、測定結果の精度が低下してしまうケースもでてきています。

 

今後は新しい技術に対する理解に加えて、マーケティングリサーチのスキルが求められる

このような環境下でデジタル広告業界に関わるマーケターとしては、「新しい技術などを情報収集」し、「様々なデータを組み合わせて解釈できる」スキルが必要になってくると考えられます。

まず、今までもデジタル業界では、アドネットワークからDSP、DMP、コンテキストターゲティングと新しい技術や方法が常に登場してきました。マーケターとしては、ユーザーの様々なデータを収集する技術や集まったデータを処理するツール、より膨大なデータを活用した配信技術など、新しいテクノロジーを理解して使いこなしていくスキルが求められてきました。そのため、今起きているデジタル識別子に対する規制についても、こうした問題を解決する新しい手法についての知識を集め、最適なツールや手法を選定していく上では、今まで培ってきている知識を応用することで対応できる部分もあります。

しかし、その一方で、先程挙げたような、効果測定が受ける影響においては、単純に新しいツールや計測ベンダーを選定するだけでは解決できない問題もあります。その最も大きな原因は、これまでは様々なデータが収集できる環境にあったのに対して、今後は、部分的なデータや偏ったデータしか収集できなくなることにあります。つまり、デジタルメディア・広告のエコシステムそのものが変わってしまったのです。これまでのように、タグなどで全件収集可能なセンサスデータを含む様々なデータが収集できる環境であれば、PDCAを回していくにあたって、例えばクリック率の高いクリエイティブに配信を寄せるなど、細かくデータを読み込むスキルや、マーケティングリサーチに対する深い知識がなくても、設定されたKPIを改善していくことができている部分もありました。しかし、今後はそうしたツールに依存した改善だけではなく、部分的なデータではわからない顧客の行動を理解するためにアンケート調査を実施することや、偏ったデータを補正するために教師データとなるような公平で中立的な第三者データを活用することも求められてくると考えられます。そのため、今まで以上にマーケティングリサーチに関わるスキルを身に着けていくことが重要になってきます。

デジタル広告業界に関わるマーケターにとっては、今までと比較すると大きな課題が顕在化している状況ですが、今までもこれからも、消費者にとって望ましいコミュニケーションを行って売上につなげていくことが、マーケターにとっての課題です。しかし、これまでは様々なデータが集まるがためにKPI指標などのデータに気を取られるばかりで、消費者が広告に接触したときにどのような顔をしているのかを想像することができていませんでした。今後も変化していくと考えられるデジタルエコシステムに柔軟に対応していくためにも、デジタルデバイスの向こう側にいる消費者のことを理解し、寄り添っていくことが求められてきます。そのためにも、様々なデータを組み合わせて消費者の行動や反応などの全体像を読み解き、消費者の共感を得られるコミュニケーションを設計できるマーケターが、これからのデジタル業界で成功していくことができるでしょう。