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コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第1回 移りゆくアメリカの主流層
レポート

コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第1回 移りゆくアメリカの主流層

2014年時点でアメリカの人口を分割すると、6割が非ヒスパニック系白人(Non-Hispanic White、 以下NHW )であり、白人中心という従来のアメリカのイメージに合致している。しかし、将来に目を向けると、このイメージに修正を加えていかなければならないことがわかる。

図1. 人種・民族別の人口増減予測

(出典:U.S. Census Bureau, Population Projections, Dec. 2012)

2030年にはNHW人口は減少を始め、代わりにヒスパニック、アフリカ系、アジア系が人口増加の中心となってくる。現時点でも、9歳以下の人口ではNHWはすでに50%を下回り、マルチカルチュラル(Multi-cultural、非白人の総称)が大勢を占めている。

図2. アメリカ人口の世代別多様性

(出典:Nielsen Population Facts 2014)

マーケターにとって、この変化を捉えることは重要だ。1990年には6,600億USドルだったマルチカルチュラルの購買力は2013年で2.9兆USドル、2014年時点では3.4兆USドルと、1990年比で400%以上の伸びを達成すると見込まれ、今後さらなる成長が予測される。このビジネス機会を捉えるために、マルチカルチュラルのグループについて、その特徴を理解してゆきたい。

図3.購買力推移予測

(出典:Selig Center of Economic Growth。購買力は税適用後の可処分所得と定義、2012)

ヒスパニックとは

アメリカの2010年国勢調査で、ヒスパニック(Hispanic)は以下のように定義されている。
“Hispanic or Latino” refers to a person of Cuban, Mexican, Puerto Rican, South or Central American, or other Spanish culture or origin regardless of race.
(訳:「ヒスパニックもしくはラテン系」とは、キューバ、メキシコ、プエルトリコ、南・中央アメリカやその他、人種に関わらずスペイン語圏由来もしくは文化の影響を受けた人を指す。)

アメリカで生まれ育ったヒスパニックに加え、移民も存在する。言語的には、英語かスペイン語を話す層が多いが、その両方を場に応じて使う層も近年は増えてきている。

図4. ヒスパニック世帯で使用される言語の変遷

(出典:Nielsen NPOWER、2013)

ヒスパニックの消費者としての特徴

ヒスパニックは世帯サイズがNHWに比べて大きく、年間の買い物の回数や1回あたりの購入量もNHWを上回るという特徴がある。特に、食品に関しては鮮度に非常に敏感だという特徴があり、費やす食費も一般的なアメリカの世帯よりも450USドル高い。食材を購入してきて好きなフレーバーを加えて調理するという傾向もあり、こういったニーズに応じた品揃えや店舗構成でヒスパニックにターゲットを定めることも可能と考えられる。

図5. 1世帯当たりの平均人数

(出典:American Community Survey、2014)

マーケティング的特徴

ヒスパニックにターゲットを絞るための調査は進んでいる。例えば、ヒスパニックはラジオの聴取率が高い、スペイン語を使用した広告により高く好意を抱く傾向がある、など、いくつかの特徴が認められてきている。それらに基づき、メーカー各社もスペイン語のパッケージやウェブサイト、モバイルアプリなどでヒスパニックへのリーチやレゾナンスを高める動きを続けている。

モバイルの浸透率はNHWよりも高く、新しい文化を取り入れながらも同時にヒスパニックとしての文化も尊重するこのグループには、これまでのマスを意識したものとは異なるアプローチが必要であり、今後のヒスパニックの市場規模を考えると、そのカスタマイズは戦略的に実施する価値があると考えられる。


ヒスパニックの消費の特徴

ニールセンが収集しているアメリカの購買行動のデータによると、ヒスパニックによる購買は売上全体の12.7%を占める。ただ、カテゴリーによってはその割合が増加するものがある。

図6. US市場に占めるヒスパニックからの売り上げ寄与率

(出典: Nielsen Homescan、2014)

リストを見てゆくと、食文化に関わるものに次いで、パーソナルケアへの興味が高いことがうかがえる。ヒスパニックは伝統的に美への意識が高い。近年の調査によると、ヒスパニック女性の社会進出が進み、高学歴化、世帯の購買への関与の上昇などの動きが徐々に見られている。その中で、自己への投資の一環としてのパーソナルケア品購入が起きているとも考えられる。また、全体的に年齢が低く子供も多いため、おむつなどベビー用品への出費も相対的に多くなっているのも特徴的である。

結び

メルティング・ポット(人種のるつぼ)と呼ばれていたアメリカも多様化が進み、サラダボウルという各人種、各民族の独自性を尊重する文化になって久しい。近年の技術の進化により、セグメンテーション、ターゲティングをより精緻に行える現在、マーケターとって、人種・民族の持つ意味と価値はより高まっている。


Nielsen report: “The Multicultural Edge: Rising Super Consumers”, Mar. 2015
Nielsen Presentation: “Beyond Purchasing Power: Multicultural Consumers”, Feb. 2015
Nielsen Newswire: “Hispanic Consumers Are the ‘Foundation’ for Beauty Category Sales”, Feb. 2015

文: ニールセン マーケティングディレクター 高橋統