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コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第2回 影響力を増すアジア系アメリカ人
レポート

コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第2回 影響力を増すアジア系アメリカ人

本コラムでは、アメリカでのマルチカルチュラル(Multi-cultural:非白人の総称)の増加と彼らの消費行動の特徴について紹介している。今回は、この10年での増加率が一番高いアジア系アメリカ人について見て行きたい。

なお、本稿でアジア系アメリカ人という場合、アメリカの2013年国勢調査にある「Asian alone or in combination」、すなわち、民族的にアジア系である、または祖先のいずれかにアジア系を持つ、という定義に当てはまる者を指す1。(同調査は、アジア系を「中国、インド、日本、韓国、マレーシア、パキスタン、フィリピン、カンボジアといった、東アジア、東南アジアあるいはインド大陸のいずれかの土地に祖先を持つ、あるいは本人が自身を“インド系”、“中国系”、“日系”といったアジア系としての認識を持つ者」と定義している。)

1. http://censusreporter.org/topics/race-hispanic/ , http://quickfacts.census.gov/qfd/meta/long_RHI125213.htm

影響力を増すアジア系アメリカ人

アジア系アメリカ人の人口は、2014年末に1,940万人と、2002年からの12年間に約1.5倍の急激な増加を見せ、2060年までにはさらに約2.5倍になると見込まれている2。この伸びは主に移民として流入してくる層の増加によるもので、2013年、中国、インドからの移民はそれぞれ14万7,000人、12万9,000人と、従来アメリカへの移民の最大の流入元であったメキシコを超えた3。また、人口全体に占める割合は6%と他のマルチカルチュラルのグループに比べ小さいものの、その購買力の大きさや文化的な影響力の強さを考えると、注目すべき存在と言える。

2. https://www.census.gov/content/dam/Census/library/publications/2015/demo/p25-1143.pdf
3. http://www.census.gov/content/dam/Census/newsroom/press-kits/2015/china_paa_v14.pdf

アジア系アメリカ人マーケットに注目する意義

アジア系アメリカ人の特徴として、所得水準の高いことがまず挙げられる。アジア系アメリカ人の世帯年収の中央値は2013 年で67,065ドルと、非ヒスパニック系白人の58,270ドルを上回っている4。その結果、購買力も高い水準にあり、1世帯あたりの消費支出額は米国の標準的な世帯に比べ約19%多い。2014年に7,700億ドルだったアジア系アメリカ人全体の購買力は、2018年には1兆ドルに達すると見られる。これはサウジアラビアやスイスの国全体のGDPを上回り、トルコのそれに匹敵するレベルである。アジア系アメリカ人によって構成される市場がいかに大きく魅力的であるかを物語っている。

図1. アメリカ全体とアジア系アメリカ人の1世帯当たりの消費支出

(出典: Bureau of Labor Statistics Consumer Expenditure Survey, Q3 2013 – Q2 2014)

高い購買力に加えて、「消費者」としての期間が長いことも、アジア系アメリカがマーケターにとって魅力的なターゲットである理由となっている。アジア系アメリカ人全体の年齢の中央値は35歳と若く(白人は42歳)、平均寿命は、87.3歳と高い(白人は78.7歳)。この「消費者」としての期間の長さは、企業やマーケターにとっては長期に渡る関係を築くチャンスがあることを意味している。

4. http://www.census.gov/content/dam/Census/newsroom/press-kits/2015/china_paa_v14.pdf

消費者像:家族とのつながりや伝統を重視する一方、新しいテクノロジーには強い関心

アジア系アメリカ人の1世帯当たりの人数の平均は、3.1人と、全米平均の2.7人を上回る。移民して日が浅い層において、経済的な理由から単身世帯より複数世帯の割合が高いのは、人種を問わず見られる傾向であるが、アジア系アメリカ人の場合、移民1世代目の子女でも教育レベルが高く、結果高い収入を得る者が多いにもかかわらず、結婚まで親元で暮らす割合が高い(85%)。米国生まれの者も、移民である親世代、祖父母世代と強い繋がりを保ちながら生活することは、すなわち価値観・生活スタイルも影響を受けていることを意味する(無論、メインストリームの社会との接触も多く、複数の文化の影響を受けながら生活している)。

一方で、新しいテクノロジーには強い関心を持っており、スマートフォンやタブレット、スマートTV等のデジタルデバイスの保有率は平均的なアメリカ人に比べ高い。さらに、メディアの視聴行動も他のグループに先駆けて変化しており、従来型のテレビの視聴時間が短くなり、インターネット経由での視聴が増える傾向にある。

図2. アメリカ全体とアジア系アメリカ人1人当たりのメディア種類別の視聴時間

(出典: Nielsen Total Audience Report, Q4 2014)

購買・消費行動

ニールセンが収集している世帯別の購買行動のデータを見ると、食料品では野菜・穀物や前菜が、平均的な米国の世帯に比べ特に購買金額が大きいカテゴリーとなっている。他にも卵や魚介類等の生鮮食品、食用油の購買金額もよく購入されるカテゴリーである。食品以外では、カメラ、フィルムやスキンケア用品、またベビー用品の購入金額が大きい。

ここから、推察されるのは、家庭での生活を重視する傾向(家での調理、ベビー用品への支出)、そして、健康・美容志向の強さである。後者をさらに見ると、アンケートに回答したアジア系アメリカ人の22%が「家ではなるべくジャンクフードを食べないようにする」、31%が「オーガニックな食品をなるべく食べるようにする」と回答している5

図3.アジア系アメリカ人の世帯で購入金額の多いカテゴリー(全世帯平均=100)

(出典: Nielsen “Ethnic Shopper Marketing, Multicultural Insights”, January 2015)

商品の選択に関しては、品質へのこだわりからブランド特にナショナルブランドへのロイヤリティが高く、プライベートブランドは避ける傾向がある。ただ、価格や値頃感には敏感で、値引き販売やクーポンを使って好みのブランドの商品を購入する傾向がある。企業やマーケターは、これらの特徴を理解した上で、このマーケティング施策を検討する必要があるだろう。

5. GfK MRI, Attitudinal Insights, August 2013–September 2014

結び

アジア系アメリカ人は、人数の増加と購買力の高さ、母国の文化や価値観の影響の強さを考えると、企業やマーケターにとって無視できないグループと言える。特にアジアの文化に関する親近感は、日本企業がアプローチを検討する上でのひとつの切り口となるかもしれない。アジア系アメリカ人の中でも出身国が多岐にわたり、マーケティングに値するセグメントをどう定義するかは容易ではないが、まずは、米国全体或いは他の人種・民族との違いを大まかに理解することが重要であろう。


Nielsen: “The Multicultural Edge: Rising Super Consumers”, Mar. 2015
Nielsen: “Asian-Americans: Culturally Connected and Forging the Future, The Asian American Consumer 2015 Report”
Nielsen: “Ethnic Shopper Marketing, Multicultural Insights”, Jan. 2015

文: ニールセン コンシューマーインサイト ディレクター 岩渕真理

コラム・シリーズ「米国における人種別の消費行動」  次回は、マルチカルチュラルとしては最も長い歴史を持つアフリカ系アメリカ人に着目する予定です。