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コラム・シリーズ 「世界の流通チャネルの最新事情」 第2回 東南アジアでのトラディショナルストアの重要性
レポート

コラム・シリーズ 「世界の流通チャネルの最新事情」 第2回 東南アジアでのトラディショナルストアの重要性

依然として重要なトラディショナルストア

アジア(インド含む)のチャネル別の一般消費財の売り上げ構成比を見ると、2014年時点で48%と売り上げの約半分を占めている(図1)。スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどのモダントレードの構成比が年々増加しているとはいえ、2020年でもトラディショナルストアから売り上げが44%占めると見られる(ニールセン予測、図2)。

図1. アジアにおける流通チャネル別の売上貢献度

(出典: Maximizing Traditions: The shop, the shopper, and the shopkeeper Oct. 2015)

図2. アジアの途上国におけるモダントレードとトラディショナルストアの売り上げ構成比実績および予測

(出典: Maximizing Traditions: The shop, the shopper, and the shopkeeper Oct. 2015)

東南アジアについて国別に見ると、ベトナムでのトラディショナルストアの売り上げ構成比が87%と突出して高い。シンガポールを除き各国で軒並み50%を超えており、いずれの国でも売り上げの拡大には、トラディショナルストアの攻略が必須といえる。

カテゴリー別に見ると、食料品・飲料が上位を占めるものの、日用品・家庭用品もトラディショナルストアでの購入が多い(消費者アンケートに基づくデータ)。従って、一般消費財のメーカーにとっては、カテゴリーに関わらずトラディショナルストアでの配荷をいかに広げるかが、アジア市場で売り上げを拡大するための鍵となる(図3)。

図3. インドネシアとベトナムにおいて消費者が日常的にトラディショナルストアで購買する商品。

(出典: Nielsen Shopper Trend 2013/2014)

トラディショナルストア攻略の難しさ

トラディショナルストアは、1店舗あたりの売り上げが少ないため(インドネシアの場合、一般消費財を扱う店舗数の9割をトラディショナルストアが占めるのに対し、売り上げ構成比は約6割に留まる)、数多くの店に配荷できないと、充分な売り上げが確保できない。トラディショナルストアに配荷を進める際の難しさは、いうまでもなく次の2点に集約される。

  1. 店舗の数がモダントレードに比べ圧倒的に多く、店舗にアプローチするためのコストがかかる。
  2. 店舗が小規模で各店舗で取り扱える商品の数が少ないため、店舗にアプローチできたとしても、店舗での品揃えに自社製品を加えてもらうのは、容易ではない。

上記1に関し、インドシア、マレーシア、ベトナムではトラディショナルストア(日用品も扱う食料品店のみ)の数が100万を超える(図4)。また、ほとんどが個人経営の店のため、個別にアプローチすることが必要となることも考えると、店舗との交渉に必要な営業コスト(労力)が膨大であることがわかる。

上記2について、1店舗の広さの平均を見ると、トラディショナルストアの構成比が大きいインドネシア、ベトナムでは20平米未満と非常に狭く、扱っているカテゴリー数もそれぞれ25、12と少ない。このような状況で、自社の製品を店舗に配置してもらうが容易ではないことは、想像に難くない。

図4. 東南アジア各国におけるトラディショナルストアの特性

(出典: Maximizing Traditions: The shop, the shopper, and the shopkeeper Oct. 2015)

トラディショナルストアに効率的に配荷を進める鍵

トラディショナルストアからの売り上げを効率的に進めるには、膨大な数の店舗の中から、より自社製品を売ってくれそうな店舗を特定し、重点的に営業を行う必要がある。トラディショナルストアでは、1店舗あたりの売り上げが少ないとはいえ、その中でより売り上げの高い店とそうではない店が存在する。また、個人経営の店が多く、1店舗あたりの取り扱いカテゴリーが少ないということは、すなわち、店舗により売れ筋の商品に違いがあることを意味する。したがって、自社製品のカテゴリー、或いは自社製品と同じような価格帯・製品特性を持った商品を、より多く売っている店舗を把握することが、効率的な配荷につながる。

では、どのようにすれば自社製品がより売れそうな店舗を特定し、訪問することができるのだろうか。店舗に関するデータには、1) どのような商品をどれだけ売っているかという売り上げに関する情報と、2) 店舗がどのようなロケーションにあり、どのような設備があり、どのカテゴリーを扱っているかという店舗そのものの特性を示す情報がある。これらを結びつけて分析することで、実際にどのような特性を持つ店舗に配荷の営業をかけるべきかが特定できる。

(写真はイメージです)

本稿ではトラディショナルストアでの配荷の重要性について述べてきたが、消費者がトラディショナルストアに求める商品を提供する必要があるのはいうまでもない。前回のコラムでも紹介した通り、消費者はモダントレードとトラディショナルストアを目的によって使い分けており、トラディショナルストアは、日常的に消費する商品を求めて頻繁に訪れるチャネルとなっている。従って、訪れる消費者は商品特徴を詳しく吟味することはせず、小パックあるいはサシェ形式など、当日使用しやすい仕様の製品の購入の割合が高い。トラディショナルストアで売り上げを伸ばすには、配荷に加え、製品設計や価格設定で、これらの消費者の購買行動・意識を考慮する必要があることを、最後に述べておきたい。

<参考文献>

・Maximizing Traditions: The shop, the shopper, and the shopkeeper, Oct. 2015
・Nielsen Shopper Trend 2013/2014
・Asia Pacific Retail and Shopper Trend 2014

文: ニールセン コンシューマーインサイト ディレクター 岩渕真理