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コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第3回 アフリカ系アメリカ人の社会と消費行動の特徴
レポート

コラム・シリーズ 「米国における人種別の消費行動」第3回 アフリカ系アメリカ人の社会と消費行動の特徴

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本コラムでは、アメリカでのマルチカルチュラル(Multi-cultural:非白人の総称)の増加と彼らの消費行動の特徴について紹介している。最終回となる今回は、米国社会で確固とした伝統を保有し成熟したコミュニティーを確立しているアフリカ系アメリカ人について見ていく。

アメリカの多様性を象徴するグループとして、アフリカ系アメリカ人についてはある程度のイメージをお持ちの方が多いだろう。しかし、マーケティング活動で彼らをターゲットとする際には、彼らの従来のライフスタイルや消費行動、そして新しく起こっている変化にも留意する必要がある。

アフリカ系アメリカ人社会に対する従来型の見方

米国に住むアフリカ系アメリカ人は4,570万人で総人口の14%を占める1。直近5年での人口の増加は5%程度であり、このコラムシリーズで扱うマルチカルチュラルの中で急激な人口増加を見せているアジア系やヒスパニックに比べて、その増加は緩やかである。歴史的に南部や工業地域、ワシントンD.C.での人口構成比が高く、この傾向は現在も続いている。ニューヨークなどの大型都市圏を除いて、特定地域、都市での大幅な人口の増減は数10年間見られない2

アフリカ系アメリカ人の所得水準は相対的に低い。世帯年収の中間値は2013年の国勢調査で34,958ドル。これはアジア系アメリカ人の約半分の数値であり、ヒスパニックと比べても10,000ドル以上も低い3

米国において非ヒスパニック系白人に次いで長い歴史を持つアフリカ系アメリカ人が生活の基盤としてきたのは、コミュニティーへの帰属、文化規範への従属であった。アフリカ系アメリカ人という文化的、民族的な出自が自らにとって重要であると考える割合は高く、他のマルチカルチュラルセグメントに比べ20%も高い。アイデンティティーの支柱となるコミュニティー形成に黒人教会の役割は重要であり、ミサへの定期的な参加率は現在でも56%を超える。

こうして見ていくと、困難な歴史を歩む中で生活基盤を支えるため、民族的な同一性を保持するため文化規範に重きを置き、強いコミュニティーを形成し互いの生活を支え合ってきた伝統的なアフリカ系アメリカ人の像が浮かび上がる。

1. http://factfinder.census.gov/faces/tableservices/jsf/pages/productview.xhtml?src=bkmk
2. http://www.census.gov/newsroom/press-releases/2014/cb14-118.html
3. http://www.census.gov/content/dam/Census/library/publications/2014/demo/p60-249.pdf

 

アフリカ系アメリカ人社会における新しい動き

前述の通り、アフリカ系アメリカ人の所得水準は平均的アメリカ人に比べて低いが、詳細に見ると世帯年収は近年増加傾向にある。50,000ドル以上の世帯は昨年時点で44%を超え、前回調査に比べて世帯数ベースで13%増加した。

資本参加にも積極的だ。米国全体でみると2008年の世界金融危機勃発以降、企業経営者の数は伸び悩み、2007年度から2012年度にかけ、全体でわずか2%程度しか増加しなかったが、同時期のアフリカ系アメリカ人の経営者数は実に34%の増加、2012年時点で2,593,186人に達している。ごく最近まで人種別でわずか数%を占めるにすぎなかったアフリカ系アメリカ人経営者は、金融危機を経て、米国全体の企業家数の10%に達しようかとしている。依然人口構成比よりは低い水準ではあるが、アフリカ系アメリカ人の経済面での貢献は確実に増加している。

行動面での新しい動きは、コミュニケーションのあり方に見られる。例えばアフリカ系アメリカ人におけるスマートフォンの保有率や、フェイスブックやインスタグラムといったソーシャルネットワークサービス(SNS)の利用時間は、今や非ヒスパニック系白人よりも高い。SNSを通じて企業やブランドへ何らかのサポートをしようとするグループの割合は平均的なアメリカ人の割合よりも80%も高く、オンライン上での商品レビュー、ランク付けをする人の割合も平均より76%も高い。コミュニティへの貢献をするという従来の特徴を持ちつつ、新しいメディアを柔軟に取り入れている様子が見てとれる。

コミュニケーションにおける新しい動きの背景にはアフリカ系アメリカ人社会の人口の特徴、すなわち35歳以下の年齢層が全体の53%を占める若年層に寄った人口構成を持つ社会であることも見逃せない。いずれにせよ、彼らの新しい行動様式の特徴として留意するひとつのポイントであろう。

アフリカ系アメリカ人女性の意識変容にも着目したい。彼女たちは、敏感にトレンドを察知、牽引するトレンドセッターとして自らを位置づけている。関連するいくつかの調査結果をあげると、例えばニーマン・マーカスやブルーミングデールズといった高級デパートで商品を購入するグループの割合が一般的なアメリカ人よりも高い、Eコマースの受容が早くオンライン上で服を買う人の割合が一般的なアメリカ人よりも高い、SNSを1日3時間以上使う人のグループ割合が全体平均の2倍、等々、積極的にトレンドを作り上げ発信している姿が浮かぶ。40%のアフリカ系アメリカ人女性は自らをトレンドセッターとして位置づけるが、ビヨンセやリアーナ、キム・カーダシアンといったセレブリティ層は、アフリカ系アメリカ人女性があまねく持つこうした自己像を象徴したアイコンであると言えるだろう。

ここまでアフリカ系アメリカ人、そしてその社会におこるいくつかの新しい力学を見てきた。次の項からは実際に企業は彼らにどのようにリーチしているか、また企業活動において留意すべき事項は何か、メディア・広告に関連する調査結果をベースに考察していく。

メディアへの接触と受容:新旧メディア

アフリカ系アメリカ人はラジオをよく聴く特徴がある。92%のアフリカ系アメリカ人は週に12時間以上ラジオを聴き、これは平均的なアメリカ人よりも長い。従来メディアについては他にも同様な調査結果があり、例えばテレビ視聴については平均的アメリカ人より週に14時間長く視聴している調査結果がある他、雑誌の購読率についても平均的アメリカ人よりも高い。

一方で、前述の通り、彼らは新メディアへの受容感度も高い。アフリカ系アメリカ人は、あらゆるメディアを生活の時々に応じて使い分け、感度高く情報をキャッチし、自らも発信しようとしていることがうかがえる。

好まれるコンテンツについても特徴があり、アフリカ系アメリカ人のみをターゲットにした特定コンテンツが米国にはいくつも存在する。新聞がとりわけ有名で、全土では多くのアフリカ系アメリカ人向け新聞が発行されている。母体組合であるNational Newspaper Publishers Associationは200以上の新聞から成り立ち、加盟誌から情報を吸い上げサイト上で情報を全国に向け発信している4。雑誌でも『The Afro』、『Chicago Defender』他アフリカ系アメリカ人をターゲットとした雑誌が存在し、近年ではGrio.comやRoot.comなどオンライン系のニュースサイトも登場している。企業は効果的にアフリカ系アメリカ人にリーチする際に、こうした専門メディア、コンテンツを活用することができる。

4. http://nnpa.org/

アフリカ系アメリカ人向け広告出稿と、広告内容のアプローチ

こうした専門メディアへの出稿を含め、アフリカ系アメリカ人をターゲットとした広告は近年増加傾向にある。2013年の全米での広告出稿費は前年比で2%の増加にとどまるのに対し、アフリカ系アメリカ人向けに出稿した広告費は前年比7%増加した。前年比増加ランク順に産業別広告出稿費をまとめた表が以下である。

図1. アフリカ系アメリカ人向け2013年産業別広告出稿費、前年比増加割合順

(出典:Nielsen Motion Plus. 2014)

金融、保険が上位に来ているのは、アフリカ系アメリカ人の世帯収入が増加していることが背景にあろう。また、世帯収入の増加に呼応し教育水準の向上が見込まれることから、教育機関も広告費を増加させている。

アフリカ系アメリカ人の好む広告内容に関しても見ておきたい。彼らは広告表現における多様性を重要視しており、製品の広告表現中にアフリカ系アメリカ人が登場していると、そうでない場合よりも38%高い割合で購入する調査結果がある。また、アフリカ系アメリカ人系のセレブリティが利用している製品について購入割合が高くなり、同様に有色人種やマイノリティが興した企業の商品について、他の民族的特徴を持つ消費者よりも高い割合で購入する傾向がある。

アフリカ系アメリカ人にリーチするには彼らの社会に起こる変化を見て取るとともに、彼らの好む属性へ理解を深め、表現や媒体を工夫することが必要であろう。

購買・消費行動

最後に、アフリカ系アメリカ人の購買行動の特徴について見てみよう。下の図2はニールセンが収集している世帯別の購買行動のデータで、アフリカ系アメリカ人の購入金額が全土の世帯購入金額に対してどれだけシェアがあるかを示している。すべてのカテゴリー合計の購入シェアが10.6%なので、この数字よりも大きい場合、アフリカ系アメリカ人がアメリカ人平均よりもよく購入しているカテゴリーとなる。

図2.アフリカ系アメリカ人の購入金額シェア、カテゴリー別上位順

(出典:Nielsen Home Scan 10/13/13 to 10/11/14)

シェアが大きいのは美容やパーソナルケア系の製品であり、スタイリング、フレグランス、石鹸や制汗剤などがここに入ってくる。食料品ではアフリカ系アメリカ人の食生活を反映し、ホットソース(唐辛子系のソース)やスパイスなどが高いほか、健康意識の高まりの中、サラダなども、相対的に購入される割合が高い。

総じて、伝統的な食生活を反映しつつ、美容と健康への興味の高まりを反映した結果となっている。特に健康への興味が高まっていることは、アフリカ系アメリカ人世帯の収入が増加していることと無関係ではない。高収入の世帯でオーガニックフードが好まれる傾向にあることなどと合わせて考えても、今後も健康への興味は継続的に高まる傾向となることが予想され、今後のマーケティング機会となるだろう。

この他、消費行動関連では、アフリカ系アメリカ人は平均的アメリカ人よりも買い物の頻度が高く、1回の買い物にかける金額が少ないという特徴があり、企業が留意すべき特徴のひとつである。

結び

アフリカ系アメリカ人は伝統的な行動様式でくくりやすく、またセグメント化も他のマルチカルチュラルよりは明確なため、その行動が特徴的で理解しやすい。その意味では企業にとって、リーチしやすいグループと言える。ただし、テクノロジーの発達は彼らの活動域、チャネルを拡大し、従来のシナリオに基づいたマーケット戦略とは別の戦略も必要になってきている。収入の増加は、彼らにとって製品選択の幅を広げたことを意味しており、また個人に起こっている意識変容は従来の選択を変更させる勢いを持っている。これらのことに充分に注意を払うことが、成長するアフリカ系アメリカ人の機会を活用するために必要である。

Nielsen report: “The Multicultural Edge: Rising Super Consumers”, Mar. 2015

Nielsen + ESSENCE report: “Powerful. Growing. Influential. The African-American Consumer 2014 Report”

Nielsen: “Listen UP: African-American Consumers and Music” 2014

文: ニールセン グローバルサービス マネージャー 竹本靖宏

多様な人々の集まる国、アメリカ。ビジネス機会を逃さないためにも、変容著しいマルチカルチュラルを的確に理解し、精緻なマーケティング活動を行うことが、今日の企業やマーケターには求められている。

コラム・シリーズ「米国における人種別の消費行動」はいかがでしたか。

次回から、新しいテーマでお届けする予定です。