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定額制ストリーミング動画視聴:SVODの普及に必要な要素を考える
レポート

定額制ストリーミング動画視聴:SVODの普及に必要な要素を考える

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米国のSVOD普及率は全世帯の40%

まずは米国の状況を簡単に確認しておきます。日本では、ようやく大きな注目が集まりだしたSVODですが、米国ではすでに番組や映画などの視聴方法 の一つとして定着しています。2013年にNetflixが自社制作したドラマ「House of Cards」の大ヒットを契機として、他社も独自コンテンツの制作を本格的に開始したことで新規視聴者の裾野を拡げることに成功し、SVOD市場が急速に成長したことはこれまで幾度も報道されているとおりです。2015年3月の米ニールセンの発表では、2014年の第4四半期(10-12月期)時点で SVODはテレビを保有する世帯の40%に普及しており、複数のサービスを契約している世帯も13%程度存在する状況となっています(図表1)。

一方、日本でも数年前から複数の会社がSVODサービスを提供していますが、本格的な普及というまでに至っていないのが現状です。

米国では従来からケーブルテレビなどを通し料金を支払ってテレビを視聴する環境があり、それらの利用料金よりも割安で他では見られないコンテンツが視聴できるSVODが普及するのは理解しやすいと思います。しかし日本では状況が異なります。レンタルビデオ店などからレンタルしたコンテンツを視聴する ことは定着しているものの、地上波で流れている多くのコンテンツは無料で見られるという意識が定着している日本でSVODが今後普及していくために必要な要素を2つの観点から考察していきたいと思います。

図表1: 定額制ストリーミング動画視聴サービス普及率(米国) 2014年第4四半期

図表1: 定額制ストリーミング動画視聴サービス普及率(米国) 2014年第4四半期

良質のコンテンツを生み出すための会員ベースの拡大

NetflixをはじめとしたSVODが広く普及するためには、コンテンツを充実させることがキーであることは誰もが口にすることです。中でも如何にオリジナルのコンテンツを提供していかに注目が集まっていますが、市場を成長させるような良質なコンテンツを定期的に制作していくためには多額の製作費が必要となります。前述のNetflixの普及を加速させたオリジナルドラマ「House of Cards」は1シーズンの製作費が100億円とも言われており、現在配信中の各種オリジナルドラマも同規模の製作費で作られているものが見受けられま す。これらの製作費と会員への課金をベースとした売上とを比較すると、会員数を出来るだけ早く拡大していくことが重要な課題であることが分かります。

例えば、Huluはサービス開始から今年3月までの約3年半で100万人の有料会員を獲得したと発表しています。単純な計算をすると、月額1,000円を支払う会員が100万人なので月10億円、年間で120億円の売り上げとなります。制作費を誰が負担するのかという話はありますが、120億円の売り上げに対し100億円の製作費を賄うことは難しく、世界配信を前提とした投資になると思います。そうなると日本独自性を反映したコンテンツがどこまで通用するのかという問題も出てくると考えます。また、既に海外で制作されたドラマを配信するだけでは一部の海外ドラマファンを取り込むだけに留まる可能性があり、過去のコンテンツを配信するだけでは十分な差別化を図るには至らないものと思われます。やはり幅広く有料会員を取り込むためには、まずは先行投資として様々なジャンルで日本向けのオリジナルコンテンツを制作する必要があると思います。

忘れてはならないキーワードは「Binge-watching」

クオリティの高いオリジナルコンテンツの制作と同様に必要な要素が、それらをどのように配信するのかだと考えます。米国では「Binge- watching」という言葉が辞書にも掲載されるほど定着しています。これを日本語にすると「一気見」ということなります。つまり一つのドラマを複数話 続けて視聴するスタイルです。決まった曜日の決まった時間に視聴することが基本の従来型のテレビ放送とは違い、マルチデバイスを活用し、好きな時に好きな場所で好きなだけ見ることが出来るのがSVODのメリットです。特に「好きなだけ」見たいという部分が実は重要な要素ではないかと考えています。米ニールセンの2013年の調査ではNetflixユーザーの88%、Hulu Plusユーザーの70%が3話以上を同じ日に一気に見ているという結果もでています。SVODユーザーは「まとめて視聴できる」ことに魅力を感じていることは間違いありません。

しかし、日本のSVODではこの「Binge-watching」を可能にするオリジナルコンテンツの配信がまだ手薄であると思います。米国 Netflixの「House of cards」やその他のコンテンツは全話を一度に配信していますが、日本の各社が展開する日本独自のコンテンツは「先行配信」や「見逃し配信」という形で 配信されているものの、従来のテレビ放送と変わらず1週毎に最新話が配信されていく形をとっています。無料期間から有料期間への誘導を狙うのであれば、それも一つの戦略であると思いますが、有料契約の拡大のためには「Binge-watching」に対応した配信も検討に値するのではないでしょうか。

例えば、ドラマであれば最終回に向けてストーリーは盛り上がりを見せますので、そこまでに作品に興味を持たせることが重要ですし、物語の序盤で視聴を習慣化してもらうことがキーになります。しかし、国内外のクオリティの高い様々なエンタメを手軽に楽しめる現在では、毎週更新の配信では、忘れたり、興味を失ったり、他のエンタメに関心を奪われたりする確率も格段に高いはずです。そのため日本独自のコンテンツの充実と並行して「Binge Watching」に対応した一気にクライマックスまで視聴できるコンテンツを複数展開していくことも重要な要素であると思います。

動画コンテンツの視聴も生活者側に主導権が移り始めた

ソーシャルメディアが普及した現在、生活者はブランドについて企業の知らない場所で語り合い、生活者主導でブランドが形成されるようになり、ブランドは企業のコントロールから離れたと言われています。

SVODの登場や無料のストリーミング動画視聴の普及により、生活者が動画コンテンツの視聴についても主導権を持つという状況が定着し始めているの ではないでしょうか。今まで供給者側が一方的に曜日と時間を決めて配信していたコンテンツが、生活者が自分の好きなタイミングで好きなだけコンテンツを視聴できるようになり、そこにメリットを見出す。このような新たな視聴形態にいち早く対応し、生活者の視点に立ってサービスを提供していく企業が今後勝ち組 となっていくのではないでしょうか。

米ニールセンではNetflixをはじめとしたSVODで配信されているコンテンツの視聴動向を調査する取り組みを拡大しており業界の注目を集めています。日本でも今後の動画ストリーミングの動向に注目していきたいと思います。

(ニールセン エグゼクティブアナリスト 中村 義哉)