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日本でトータルオーディエンス計測を進めていくために考えるべきことは
レポート

日本でトータルオーディエンス計測を進めていくために考えるべきことは

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2016年9月から10月は、テレビの視聴率計測において大きな動きがありました。まず、米国ニールセンが、タイムシフトを含むテレビ視聴と各種プラットフォームを通したデジタル視聴の両方を統合したトータルオーディエンス計測を2017年3月から広く市場に提供すると発表しました。また、日本ではビデオリサーチ社が関東地区のテレビのタイムシフト視聴の計測を正式に開始し、さらには、スマートデバイスでの視聴計測の準備を開始することも発表しました。そこで今回のコラムでは、トータルオーディエンス計測について、アメリカでの事例を紹介し、日本で実現していく上での課題について考えたいと思います。
 

トータルオーディエンス計測が必要になった視聴行動の変化

日本では若年層のテレビの視聴時間が短くなっていることについてよく話題になりますが、米国も同様で、数年前からすでにメディア視聴の大きな転換点来ています。特にスマートフォンに代表されるモバイルデバイスやNetflixやAmazon Prime Videoなどの定額制動画配信サービス(SVOD)の急速な普及が、消費者、特に若年層(18歳から34歳くらいまで)のメディア接触行動を根本から変革しました。この年代は今「ミレニアル世代 (Millennials)」と呼ばれており、人口も多く今後の消費の中心になる世代ということで、その動向に注目が集まっています。また、彼らは幼い時からデジタルに慣れ親しんでいるデジタルネイティブでもあり、テクノロジーの進化をうまく生活に取り込んでいます。
具体的に2014年11月と2015年11月を比較して各デバイスの利用者数の増減を見ると、18歳から34歳ではテレビの視聴者数の減少が他の年代と比較しても大きくなっています。一方でPCやタブレット、テレビに接続された機器の利用者数は増加しており、特にスマートフォンの増加が目立ちます(図表1)。

 

図表1:米国の各デバイスの視聴者数増減 2014年11月と2015年11月比較

このように、従来のテレビ視聴率だけでは把握しきれない分散した視聴行動の増加が、トータルオーディエンス計測を実施しなければならない背景にはあり、特にミレニアル世代の視聴を正確にとらえることが将来の市場の成長にとって必要不可欠になっています。ではトータルオーディエンスとはどのような考え方のもとに計測されているのでしょうか。
 

トータルオーディエンスの考え方

トータルオーディエンス計測は、デバイスやプラットフォームの種類を問わず、コンテンツと広告の両方を統一された指標で計測することができる環境を構築することを目標に開発された手法で、コンテンツ(番組)、あるいは、広告の視聴状況の全容を正確に把握し、それらを正当に評価していくための計測となります。
具体的に、ニールセンが提供を開始する「ニールセン トータルオーディエンス」では、従来のテレビのリアルタイム視聴に加えて、DVRによる録画やゲーム端末、マルチメディア端末(Apple TVなど)などテレビに接続された機器によるタイムシフト視聴、そしてPC、および、モバイル端末からの視聴を計測しています。また、各プラットフォームからの視聴を、それぞれの重複を除いた総視聴者数(トータルオーディエンス)で計測しています。
 

トータルオーディエンス計測を実現するためのビッグデータ活用

トータルオーディエンス計測を実現する上では、様々なデバイス、プラットフォームを通して行われるデジタルでの視聴行動をすべて捉え、それを統計的に信頼できる数値で提供することが極めて重要です。そのためにはそれらに対応できる規模の調査パネルを構築する必要がありますが、現代の分散した視聴行動の下では、従来の視聴率計測で用いられてきた代表性のあるパネルのみを用いた調査ではカバーできない部分が多くなっています。
そこでニールセンでは、膨大な量のデータベースを保有している外部のパートナーと協業することで、その課題を解決しています。例えば、Facebookとの協業です。Facebook は多くの国で最大のSNSとなっており、利用者の多くは性別、年齢といった情報を正しく登録しています。米国では約1億8,000万人の利用者がいますが、これは、それだけの数のユーザーパネルがある、と読み替えられます。ただ、Facebook も一部、利用者に偏りがあったり、登録情報に誤りがあったりするのも事実です。そこで、Facebookのユーザーデータのようなビッグデータに、ニールセンが従来から構築、運用してきた代表性パネルと、そのパネルの行動データを科学的、統計的に処理することで較正(カリブレーション)することで精度の向上を図っています。これにより、従来のパネル調査のサンプル数の限界とビッグデータの偏りという両方のマイナス点を補うことができます。
このようなハイブリッド方式での視聴計測が、分散した視聴行動を正確にとらえるうえで、とても重要な考え方です。
 

トータルオーディエンスに向けた日本の現状

冒頭で触れたとおり、日本では10月からビデオリサーチ社がタイムシフト視聴の計測を開始し、従来の「視聴率」に加え、「タイムシフト視聴率」、および、それらの重複部分を除いた「総合視聴率」の提供を開始しました。同時に、スマートデバイスによるテレビ視聴の測定についても準備も始めると発表しています。消費者がコンテンツを視聴する環境としては、日本でも2015年に民放5社による見逃し配信サービスのTVerが開始されたり、今年のリオ・オリンピックでもNHKスポーツやGorin.jpにより各種競技のライブ配信が行われたりするなど、テレビ以外での視聴環境も徐々に整い始めています。この状況は2020年の東京オリンピックに向けて加速していくと考えられますので、それまでに米国と同じようにトータルオーディエンスを計測する手法の開発が必要不可欠でしょう。
 

日本でのトータルオーディエンス計測実現へ向けての課題

日本でトータルオーディエンス計測を実現するために乗り越えるべきハードルは大小多々ありますが、今回は2つの大きな課題を取り上げたいと思います。

  1. 個人視聴率なのか世帯視聴率なのか 米国では、テレビ視聴率は世帯視聴率に加えて個人視聴率も提供されています。デジタル側の視聴計測は個人が前提となるため個人視聴率を用いた統合が比較的容易ですが、日本では現状、世帯視聴率が活用されています。日本においてデジタル側で計測する個人視聴をどのように統合していくのか、業界全体として、まず考えるべき課題であると思います。
  2. 全国視聴率なのかエリア視聴率なのか 個人視聴率と同様に考えなければならない課題は、計測エリアの問題です。デジタルでの計測はその性格上、全国を対象としていますが、テレビではエリアでの計測が主流となっています。この違いも、日本でトータルオーディエンス計測を実現させるためには解決しなければならない非常に重要な課題と言えます。

以上、米国での事例をもとにトータルオーディエンスについて考えてきました。日本でも視聴の分散は米国と同様の状況に向かっていると思います。また2020年に向けてメディアをとりまく環境は大きく変化していくことが予測されますので、計測手法もその変化に対応していく必要があります。
米国ではいち早くトータルオーディエンスの提供が始まりますが、それらの知見を日本でも活用できるように、当社も2020年に向けて積極的に情報を取得し、共有できるように活動していきたいと考えています。

(ニールセン エグゼクティブアナリスト 中村 義哉)