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ブランディング目的のマーケティング施策の中長期的な効果を正当に評価するには?
レポート

ブランディング目的のマーケティング施策の中長期的な効果を正当に評価するには?

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「最適なメディアミックスに向けて」(2016年11月16日)では、各マーケティング施策がどれだけ売上などの最終目標(KGI: Key Goal Indicator)に貢献したのかを測定する方法として、マーケティングミックスモデリング(以下MMM)と、マルチタッチアトリビューション(以下MTA)についてご紹介しました。その際に評価指標として想定していたのは「売上」や「申込数」、「アクティブユーザー数」などの各企業のKGIです。これらの分析は、企業の数週間から数ヶ月単位の短期的な売上を最適化していく上では、非常に重要な参考情報となります。

しかし、中長期的な視点で見た時に、ブランディング目的で行っている施策の効果を評価する上では適さない場合もあります。それは、「好きになってもらうための活動」と「すぐに買ってもらうための活動」をKGIという同じ指標で評価すると、後者の方が効果は高いという結果が出やすくなるためです。では、どうすればブランディング目的の施策を正当に評価でき、どのような施策が効果的なのかを判断していけばよいのでしょうか。今回は、この中長期的な視点でのブランディング施策の効果測定について考えてみようと思います。

KGIを目的変数とした時の落とし穴とは?
前回ご紹介したMMMではどのように各施策の効果を分析しているのかを見ていきましょう。
弊社にてMMMを実施する際には、売上と各マーケティング施策の出稿量等の週次データをもとに、時系列でみた時の各データの関係性を分析するケースが多いです。この時、各マーケティング施策の効果は、その実施したタイミングだけでなく、翌週以降にも消費者の意識の中に残存し、購買に影響するものとしてモデルを構築していきます。こうした残存効果を考慮することで、ある週に見たTV CMの効果を、その週だけでなく、数ヶ月後の影響も踏まえて分析を行っています。
しかし、このような考慮を行っても、短期的な売上向上を目的にしないようなブランディング目的のマーケティング施策では、売上への効果が低く出てしまう傾向があります。なぜなら、ブランディング目的の施策は図表1のように、ブランドイメージやブランド推奨意向などのブランディング指標を向上させることで間接的にKGIへ影響する面が強く、KGIに効果が出るまでに時間がかかるためです。逆に消費者にアクションを促すレスポンス目的の施策、例えば割引キャンペーンなどは直接的にKGIに影響する面が強いために、短期的な効果が出やすくなります。

このような理由から、ブランディング目的の施策を正当に評価しようとした場合、目的変数はKGI以外のものにすることが望ましいと言えます。特に、企業ブランドのイメージ向上を目的とするような施策は、具体的な商品ブランドに関する施策に比べると短期的には効果が出にくい傾向があります。そのため、各マーケティング施策の効果測定を行う際には、それぞれの施策の目的や特性を考慮することが重要になります。

中長期的な視点でブランディング目的のマーケティング施策の効果を把握するには?
中長期的な効果の把握方法としては、簡略化すると、各施策と売り上げなどのKGIとの直接的な関係を把握しようとせずに、図表2のように2つのステップに分けて把握していくことがポイントになります。

1st Stepでは、まず売上に影響しているブランド指標(KPI)が何なのか?どの指標を向上させると、売上(KGI)に影響するのか?を把握します。具体的に言うと、ブランドエクイティ調査を行い、売上と高い相関をもつブランドエクイティの総合的な強さ(総合指標)を算出し、その総合指標を向上させる各ブランド指標(ブランド推奨度やブランドイメージなど)を把握することです。ここで把握できたブランド指標を売上目標達成のためのKPIとして設定することが、第一段階となります。

続いて、2nd Stepでは、どのような施策がKPIとしたブランディング指標に対して最も効果的なのか?を把握します。言い換えると、前回のメールマガジンでご紹介したMMMやMTAの目的変数を、KGIからKPIに変更する、ということです。例えば、MMMであれば、KPIとして設定したブランド認知、選好度やブランドイメージなどのブランド指標を定期的(週次など)に調査し、各ブランディング目的の施策との相関を分析し、MTAであれば、アンケートでブランド指標(KPI)と各施策との接触の有無をヒアリングし分析することになります。

デジタルテクノロジーを活用した今後のブランディング活動
ニールセンが提供しているMTAでもそうですが、近年では、マーケティング分析に機械学習を活用し、蓄積された過去のキャンペーン結果を基に、次回以降の分析・予測精度を向上させていくことができるようになってきています。また、デジタルでのマーケティング施策であれば、コンテンツや広告にタグを入れることでアンケートベースではないログベースのデータを分析に組み込み、記憶に頼らない正確な実数ベースでの分析を実施することが可能になっています。デジタルの動画広告を活用したブランディング施策も増えてきている中、テレビやデジタルなどマルチメディアで実施している各マーケティング施策を今回ご紹介したような方法で中長期的な効果も考慮して効果測定、改善していくことは、今後ビジネスで成長していく上では必須になってくるのではないでしょうか。

ブランディング活動における重要なポイントは“プランニング”にある
今回は、ブランディング目的のマーケティング施策の効果測定の話をしてきましたが、最後にプランニングの重要性にも触れておきたいと思います。なぜなら、ブランディング活動において効率性や費用対効果だけを見ることにはリスクがあるためです。それは、効率化だけを追うことにより、ブランドを毀損する可能性があるということです。例えば、短期的に効果が高いからと言って、高級ブランドが信頼性の低い情報が掲載されているメディアに広告を出稿していたら、高級というイメージが低下したり、顧客が離反したり、低額商品しか売れなくなったりする可能性が考えられます。ブランドが長年かけて構築してきた消費者からの信頼は、一度失うと取り戻すことが非常に難しいものです。ブランディング活動を実施していく場合、信頼できるメディアを選定することやイメージを損なわない配信条件を選定するなど、入念なプランニングも重要であると言えます。
今回は、効果測定にフォーカスをあてていましたので、プランニング時のデータ分析の活用等については、別の機会にご紹介できればと思います。

(ニールセン シニアアナリスト 高木 史朗)