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コラム・シリーズ 「世界の流通チャネルの最新事情」第1回 注目に値する“コンビニなどのスモールフォーマット”の台頭
レポート

コラム・シリーズ 「世界の流通チャネルの最新事情」第1回 注目に値する“コンビニなどのスモールフォーマット”の台頭

発展段階ごとの流通チャネルの現状

近年の世界での売上を流通チャネル別に見ると、チャネルは集約されているというよりもむしろ細分化されている。例えば販売金額ベースで見ると、大型スーパーとハイパーマーケットで全体のほぼ半数(51%)を占める。では、これを経済の発展段階で分けて考えると、どのような図式が見えるのか。先進国と途上国でのチャネル別の売上貢献度を示す図を、まずはご覧いただきたい。

図1. 流通チャネル別の売上貢献度

(出典: Nielsen Retail Measurement Data, 2014-2015)

先進国では、売上の65%は大型のスーパーおよびハイパーマーケットが占めており、次いでコンビニエンスストアが続く。一方、途上国は、トラディショナルストアが単体で38% を占め、小型スーパー、大型スーパー、ハイパーマーケットがほぼ同じ割合で後を追っている。

グローバルに伸長率の高いチャネル

直近12ヵ月の伸長率で見ると、先進国では、ドラッグストア(+6%)、小型スーパー(+5%)、トラディショナルストア(+4%)といったチャネルの伸び率が、大型のスーパーおよびハイパーマーケットの伸長率(+2)を上回っている。他方途上国では、最大の占有率を占めるトラディショナルストアの伸長率は4%程度にとどまる。これに対し、ドラッグストア(+13%)やスーパーマーケット(大型+10%、小型+11%)は2桁の伸びを達成しており、先進国とは異なるチャネルが成長を牽引している様子が見られる。
コンビニエンスストアやドラッグストアに代表されるモダントレード業態の小型店舗いわゆる“スモールフォーマット”は、いずれの発展状態でも成長を続けており注目に値する。身近な店舗で急ぎの買い物を済ませるといったニーズがこの成長を下支えしていると考えられ、この「身近さ」という要素はデジタル(Eコマース)での購入にもつながる重要な要素であろう。
日本では近代的なスーパーや大型ショッピングモールの隆盛を経た後はコンビニエンスストアがチャネルとしての重要性を増してきているが、途上国ではその段階を経ずに、モダントレード業態の小型店舗や伝統的なトラディショナルストアなどを含めた“スモールフォーマット”の新たな成長が始まっている。

製品カテゴリーによっても異なる消費者の購買チャネル選択行動

マクロ的視点で見ると、チャネルの伸長は発展状態によって異なっていたが、発展状態以上にカテゴリーの影響が大きいことに驚かされる。各カテゴリーにおける流通チャネル別の売上貢献度を発展状態別に見たのが、以下の図だ。

図2. 各カテゴリーにおける流通チャネル別の販売額占有率

(出典: Nielsen Retail Measurement Data, 2014-2015)

先進国については、各カテゴリーで大部分を大型スーパーとハイパーマーケットが占めているが、パーソナルケアではドラッグストアが2割程度の売り上げを占め、占有率で同率2位に着けている。同様に、食品および飲料についてはコンビニエンスストアが2割程度の売り上げを占めて3位に着けている。一方の途上国ではチャネルが細分化されており、食品および飲料でトラディショナルストアが5割弱を占める以外は、2割程度の占有率のチャネルが複数存在している。特に、パーソナルケアではドラッグストアが26%を占め1位である。
いずれのカテゴリーも、占有率が高いチャネルは成長率で他チャネルの後塵を拝しており、さらなる集約の方向には進まないことが予見される。その中で共通してみられるのはやはり“スモールフォーマット”チャネルの躍進で、パーソナルケアとハウスホールドではドラッグストアやコンビニエンスストア、食品および飲料ではトラディショナルストアの伸長率が高く、今後引き続き注目すべき業態と考えられる。
市場の売上で大きい割合を占めるスーパーおよびハイパーマーケットを参入の第一歩に選ぶことは、配荷や商談の効率面から考えて妥当であろう。これに加えて、今後の成長のカギを握るチャネルとして“スモールフォーマット”の攻略への準備を進めておくことも重要となってくる。

モダントレード業態の小型店舗(“スモールフォーマット”)の普及が進むベトナム

小型のモダントレード業態の普及が進むベトナムを例に、消費者のチャネル選択の推移を見てゆく。下図は経年での各業態の店舗数の推移であり、スーパーおよびハイパーマーケットが伸び悩む中、ミニマートとコンビニエンスストアが伸長著しいことが見て取れる。

図3. 地域別、流通チャネル別の店舗数推移

(出典: Nielsen Retail Establishment Survey, 2012-2014)

この店舗数の変化に応じて、では、消費者の買い物がどのように変化しているのか。下図に見られるように、トラディショナルトレード業態(いわゆる戸外マーケットやグローサリーストアと呼ばれる食料品店)への訪問、買い物頻度、購入額が減少し、代わりにモダントレード業態であるコンビニエンスストアやミニマートへの訪問、スーパーマーケットでの購入額が上昇している。

図4. 消費者のチャネル利用データ

(出典: Nielsen Shopper Trend Vietnam, 2012 and 2014)

従来、トラディショナルトレードの利用は距離的な近さによる便利さや食品の鮮度へのニーズによるものが多かったが、今後はモダントレードの小型業態がこのニーズを充足していく可能性もある。

消費者の購買チャネル選択の基準

では、選択肢が増えてゆく買い物の行先を消費者はどのように決めているのだろうか。図5は消費者への聞き取りによる購買チャネル変更のきっかけのデータである。価格が重要な要素であることは想像に難くなく、実際世界中のどの地域でも最も重要との回答が得られている。しかし2番目以降の要素については、地域によって差が見られる。
アジアについて見てみると、価格に次いで僅差で「製品の品質」と「便利さ」が挙げられており、これら2つは世界平均に対しても相対的に重要度が高い傾向が見られる。
製品の質に対する意識の高さは、アジアで共通して見られる食品の鮮度に対する高い関心や、近年の食品への混入問題などから来ていると予想される。交通事情や交通手段に改善の余地のあるアジア途上国で、便利さについての意識が高いのも、うなずける結果である。都市部であっても渋滞がひどく、大型店へ買い物に行くのが大変、大きいサイズの商品を購入するのは家計への負担が大きいので小サイズを高頻度で買う、などの買い物事情を考えると、規模が小さい代わりに住宅近隣に出店しやすく、日常的な買い物先としての“スモールフォーマット”が今後も伸長する素地は、特にアジアで充分にあると推察される。


図5. 消費者のチャネル利用データ

(出典: Nielsen Shopper Trend Vietnam, 2012 and 2014)

結び

日本でデパートに代わりコンビニエンスストアが伸長しているように、世界でもチャネルの変化は進んでいる。先進国では大型店からドラッグストアやディスカウントストアのような、より特徴の明確な業態へと成長の中心が移っている。一方で、途上国ではスーパーやGMS、ハイパーマーケットの隆盛を同じようには経ずに、一足飛びにモダントレード業態も含めた“スモールフォーマット”が伸長している。営業リソースの限られる海外では特に、将来を見据えたチャネル戦略が必要となる。本稿がチャネル戦略を考える一助となれば幸いである。

注: 当コラム内で使われた流通チャネルを表す語句について

呼称 特徴
ハイパーマーケット
大型スーパーマーケット
小型スーパーマーケット
ミニマート
レジがあり、セルフサービスで買い物をする業態。床面積やレジの数で分類される
コンビニエンスストア レジがあり、セルフサービスで買い物をする業態。一般的に営業時間は16時間以上
ドラッグストア 医薬品、OTC、パーソナルケア品を主に販売する業態
トラディショナル 小型で、買い物かごもなく店主が商品をピックアップする

<参考文献>
Nielsen report: “The Future of Grocery”, Apr. 2015

分析対象国:
– Developed county: Austria, Belgium, Canada, Czech Republic, France, Germany, Greece, Ireland, Italy, Korea, Norway, Portugal, Slovakia, Spain, Sweden, Switzerland, U.K. and U.S.
– Developing country: Argentina, Brazil, China, Colombia, Egypt, Hungary, India, Indonesia, Israel, Malaysia, Mexico, Pakistan, Philippines, Poland, Russia, Saudi Arabia, South Africa, Taiwan, Thailand, Turkey, United Arab Emirates and Venezuela

Nielsen Presentation: “The Need for Speed”, Mar. 2015

文: ニールセン マーケティングディレクター 高橋統