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変化する米国の食習慣
レポート

変化する米国の食習慣

消費者の理想と現実のギャップに商品開発のチャンスを見出す

米国の食品市場で健康がテーマのカテゴリーで競争を繰り広げる各企業には成長の余地があると言えます。生鮮食品(2019年の市場規模は前年に比べて46億ドル増)、オーガニック食品(同925百万ドル増)、野菜ベースの食事をサポートする食品(同982百万ドル増)(注1)の売上高増加から市場飽和が囁かれますが、実際のところ消費者ニーズは未だ満たされておらず、ここに商品(Consumer Packaged Goods)開発のチャンスを見出すことができます。

健康的な食事をしたいという意向と実際の行動にギャップが生まれるのは、こういった食品を試したことがないからではありません。2019年には、ほぼすべて(99%)のアメリカ人が低脂肪食品または飲料を購入したことがあるものの、世帯では月平均約2回の購入に留まる結果となりました。また、オーガニック、無糖、高タンパクの食品も、月1回程度の購入に留まっています(注2)。

統計に目を通すと、米国人の食習慣には問題があるのは明らかです。 2018年には、米国人の5人に1人が肥満であるとされ(注3)、9人に1人がある時点で必要十分な食料を入手することができなかったことが分かっています(注4)。ほぼ4人に1人(注23%)が「まったく運動しない」もしくは「ほとんど運動しない」と回答しており、肥満の問題に拍車を掛けています(注5)。一方で、米国人には未来に対する前向きな期待があります。消費者の食に対する希望と購入する商品とを隔てる障壁を取り除くことで、メーカーと小売業者は、米国人の持つこの楽観主義をビジネスチャンスへと転換するすることができるはずです。

healthy intentions can guide action

米国人の3分の2は、過去5年間で自身の食習慣が変化したと回答しています。この変化はビジネスチャンスですが、メーカーと小売業者が消費者のニーズを満たす商品を市場に投入できて初めてこのチャンスを手にすることができます。今後5年間の食生活に関する調査で米国人は、より健康的な食事をし、より健康的に暮らしたいと回答しており、10人に3人が1年前よりも健康的な食品を選択していると答えています(注6)。メーカーと小売業者は、こうした消費者の実態を把握することで、変化するニーズと商品とのギャップやミスマッチを見つけ、ビジネスチャンスに結びつけることができるはずです。

若い世代が、食品に対し、新たな期待を持っていることも分かっています。

「健康的な食品」の定義はひとつではありません。20代半ば~30代の世代は、食生活を変えるにあたって健康は唯一の要因ではないとしています。この世代では健康的な食生活がより実践的に捉えられますが、50代半ば~70代半ば、95歳以上、さらに40代~50代半の世代では、健康状態の維持や特定の健康状態に大きく左右されてしまいます。20代半ば~30代の世代は、他の世代よりも健康的な食事を包括的に捉えており、「心」に良い食べ物を重視する傾向にあります。他のどの世代よりも栄養や単に食べるということ以上の価値を食に見出しており、メンタルヘルス、ストレス管理、お金と時間の節約などを幅広く考慮しています。この世代がメンタルヘルス、経済状況、時間の節約のために食習慣を変える可能性は、高齢世代と比べ2倍から3倍高いことも分かっています。

millennial eating is influenced by practial needs

ただし、こうした理想をそのまま商品化することは困難です。だからこそ、米国人の食事に対する切実なニーズに注目する必要があります。消費者、特に20代半ば~30代の世代は、自身とライフスタイルに「より力強く」作用する食品を購入したいと考えています。彼らのこうした価値観と欲求は企業にとって難解な方程式を作り上げています。

この方程式の解を見つけるには、「手頃な価格」「時間の節約」「健康的な生活とメンタルヘルスをサポートする商品」などのトピックから消費行動を掘り下げる必要があるでしょう。

食べ物だけでなく、スナック菓子や飲料も、健康的な食事をし時間を節約するという消費者のニーズを満たす重要なアイテムです。飲料は、今日最も人気のあるカテゴリーのひとつです。付加価値のある水やエネルギードリンクなどの飲料は、間食にはむかず、食事の替わりとする消費者も多くはありません。米国人の10人に3人は、エネルギーレベルを回復または維持する方法としてこうした飲料を飲むことがあると回答しています。(注7)

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この状況ですでに多くの企業がビジネスチャンスを見出しています。マリファナが入った飲料の売上は、2018年から約50%増加しています(注8)。eコマースでの飲料の売上げも絶好調で、2018年には45%増加、より多くの消費者がオンラインショッピングを選択しています(注9)。これは、スムーズに買い物ができるためとかんがえられます。メンタルヘルスとストレス管理は、食品および飲料が解決を期待されるなかではもっとも難解な課題の一側面です。消費者の健康的な食生活のために進化しているのは飲料だけではありません。食品にも心身に健やかさをもたらすことが期待されています。

Reduce stress with CPG

精神疾患は、睡眠障害と同様に、米国で広く見られる健康上の問題です。 CDCは、全米国人の推定50%が人生のある時点で精神疾患または障害があると診断されているとし、成人の3人に1人以上が十分な睡眠を取ることができていないと報告しています。改善が期待される領域であり、パッケージ商品は治癒回復のプロセスで重要な役割を果たすことができます。 

脳の状態、不安、睡眠、うつ病のサポートをうたうマーケティングプロモーションや実績のある成分を含む製品は市場に溢れています。米国市場で見つけることのできる「脳によい食品」としては、マグロ、新鮮な牛肉、牛乳を使わないヨーグルトなどを挙げることができます。メンタルウェルネスに対する消費者意識の高まりを受け、企業側も体の健康と同様にメンタルヘルスを重視する必要があると言えます。

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しかし、時間を節約し、メンタルヘルスを改善する食品であっても、リーズナブルな価格の設定が必要ということは避けて通ることはできません。価格こそが、購入を希望する商品と実際に購入する商品との間に立ちはだかる最大の障壁です。消費者は自身の購買能力を超えた商品は手に取らないからです。

ここで、冷凍食品や長期保存可能なパッケージ商品のビジネスチャンスを模索することができます。冷凍ラズベリーやパッケージに入ったモヤシなどは、健康上のメリットはそのままに、同等品のほぼ半分(ポンドあたり)の価格で購入することができ、消費者は保存して好きな時に使うことができます。多忙な世帯では長期にわたり保存することも可能で、メーカーが利用方法やアイデアを消費者に伝えることで、低価格健康食品の定期的なアクセスポイントを創出することができます。こうした商品を展開する企業は、冷蔵庫の余りものを使えるレシピなどとともに「お財布に優しい」商品を売り出すとよいでしょう。

メーカーと小売業者は、タンパク質を健康的に摂取できるお得なアイテムとして精肉を位置づけることもできます。ジャーキー(1グラムあたり25セント)、栄養バー(1グラムあたり20セント)、ナッツ(1グラムあたり13セント)など、タンパク質源として人気の商品は、外出先ですぐに食べたい消費者に適していますが、鶏肉、豚肉、七面鳥(それぞれグラムあたり2セント)と比べ1グラムあたり6〜12倍の価格で販売されています(注10)。米国人の55%が購入の際に高タンパク製品を優先しており(注11)、価格当たりのタンパク質量に関するメッセージを訴求することで、精肉の新たな市場価値を創出することができるでしょう。多くの消費者は、栄養バーやミートスナックの華やかな宣伝に気を取られており、たとえば肉が含むタンパク質量を改めて伝えることで消費行動に変化を起こすことができるはずです。つまり、グラムあたりの価格のお買い得さによって、タンパク質を求める消費者に精肉の購入を促すことができるでしょう。

さらに、時間を節約する便利さと、身体の健康以上の価値を提供する「スマートフード」は、手頃な価格で販売されて初めてその可能性を実現できます。

企業は、健康な食品市場参入の障壁を減らすために、継続的かつ直接的に課題に取り組む必要があります。米国人にとって、価格は食品および飲料の購入における最重要事項です。商品の試験的市場投入から実際の投入まで一貫して慎重な価格管理を行うことで、商品を棚に留まらせることなく買い物かごに着地させることが可能になります。