ブランド認知度がゼロになるというのは、たとえ広告が長期間停止した場合であっても異例です。しかし、ブランドの認知度は実際に減少していくものです。非常によく知られたブランドが平時の市場環境下でも広告キャンペーンを手堅く継続する目的は、ブランド認知度の減少を防ぐことにあります。8月に見られたアメリカにおける広告活動の増加は、販売促進施策ではなく、多くが認知度の維持・向上に焦点を当てた施策の可能性が高いでしょう。
認知から関心への移行
関心は、ファネル上位の考慮すべきもう一つの重要事項で、認知と密接に関連しています。ニールセンの売上予測データによると、関心と売上の間にはほぼ線形な関係があることを示しています(例:関心が10%増加すると売上も10%増加する)。2020年の世相の変容を考えると、ブランド戦略を一旦差し戻して支出を抑え、デジタル配信の割引や既存顧客へのダイレクトメールによるプロモーションといった堅実な投資への集中は、決して驚くべきことではないでしょう。これらの販売促進を重視した施策は重要とはいえども、単独での効果が見込めるものではありません。また、市場の不確実性が高い状況下で企業がブランド認知向上のための取り組みを一時停止する中においては、これらの施策は効果を発揮しない恐れがあります。
メディアや広告の現状を踏まえ、ブランドはブランド構築と販売促進の取り組みのバランスをとることに注力する必要がありますが、適切な指標なしにチャネルや予算配分を決定することは必ず回避すべきでしょう。マーケティング担当者は、ブランド構築と販売促進双方のバランスをとる必要があります。この2つは交換可能なものではなく、適切な測定基準がないままどちらか一方に集中させることは、非効率な支出につながる恐れがあります。
また、ブランド・リフトを最も促進する領域への単純な追加支出は、必ずしも賢明な策ではありません。ニールセン・トータル・メディア・レゾナンスのデータから、支出が最も多いチャネルが、70%の確率で最大のブランド・リフトをもたらすことがわかっています。そのことから、ブランドは最大のチャネルが最大のブランド・リフトをもたらすと期待すべきである一方、そのチャネルに対する追加支出が、ブランドの売上促進に自動的に直結しないことにも留意すべきです。事実、ほとんどの場合そうはならないでしょう。実際、最大のブランド・リフト効果があるチャネルの限界効率は24%しかありません。トータル・メディア・レゾナンスの分析では、最大のチャネルへの投資の増加は、ブランドの健全性を向上させることに関して、96%のケースにおい
マーケティングはブランド構築と販売促進の、ギブアンドテイクの関係からなっています。消費者の日常生活のあらゆる側面をひっくり返した世界的なパンデミックは、今後も続く可能性が高いでしょう。マーケティング担当者に今必要なのは、急速に変化を遂げる環境下でマーケティング施策をどう調整すべきかの理解に導く、最適化にフォーカスした正確な測定です。販売促進戦略は短期的な利益をもたらすかもしれませんが、ニールセンが実施したマーケティング・ミックス・モデリング分析結果からは、マーケティングによる売上へのインパクトのおよそ半分は、最初のキャンペーン開始から長い時間が経過した後にもたらされることが明らかにされており、ブランド構築が売上の最終的な収益に与える威力を浮き彫りにしています。