メディア横断でエンゲージメント指標を共通化することのメリット
ニールセン デジタル シニアアナリスト 山腰 知美
■サイトやアプリを訪問したターゲットにしっかりと広告内容が届くのか?
広告主がメディア選定をする際に、ターゲットにリーチするというのは重要な課題ですが、広告の目的によってはそれだけでは十分とは言えないでしょう。例えば、ブランド認知の獲得は既に目標達成しており、ターゲットに機能を理解してもらい、好意度を高めることをキャンペーン目的としていた場合、しっかりと視聴してもらえるメディアが最適な出稿先となる場合も考えられます。そのような場合、ターゲットリーチという "間口 "だけでは判断が難しいでしょう。
■エンゲージメント指標の共通化でキャンペーン目的に沿ったメディア横断比較が可能に
それではエンゲージメント指標という "奥行き "がメディア横断で共通化されることによってどのようなメリットが生まれるのか、米国の事例をもとに見ていきたいと思います。
メディアBを運営している会社が、自社の強みであるターゲット層の訪問時間で大手媒体を上回っていることを示すために、サイトへの滞在時間という共通指標を他メディアと比較している米国の事例によると、18-24歳をターゲットとしたときの各メディアのリーチだけで見ると、最も訪問者が多いメディアAが選定されてしまうでしょう。しかし、仮に広告主が若年層にタイアップ記事を読んでもらい、ブランドの理解と購入意向を高めることを目的としていた場合、ターゲットへのリーチが他メディアより小さくても、よりしっかりとコンテンツを視聴してもらえるであろうメディアBが選定される可能性は高くなります。
少し視点を変えて、訪問回数という共通指標で他メディアと比較することも可能です。別の例では、同じくメディアBを運営している会社が、ターゲット層の月間の訪問回数で他メディアを上回っていることを示しています。こちらは、広告主がターゲットの "奥行き "として、滞在時間よりも接触回数を重視する場合に有効な指標と言えるでしょう。
■最後に (EM INGLÊS)
リーチやエンゲージメント指標を自社で計測し、公開しているメディアも多いことと思います。しかしながら、計測が"人 "ベースになっていなければ、例えば、1人の人が複数のデバイスやブラウザから同じコンテンツや広告を見た場合に、別々の人が1回ずつ見たということになってしまいます。これでは正確な1人あたりの訪問回数や滞在時間とは言えないでしょう。米国の2つの事例で見たように、独立した第三者機関がデバイス・メディア横断で "人 "ベースで計測することによって、"間口 "であるリーチ、"奥行き "であるエンゲージメント指標を1つのデータソースで把握することが可能となります。いずれも基本的な指標ですが、前回のメルマガでも述べた通り、メディア横断で比較可能な基本指標が揃って初めて比較検討、差別化が可能
・本記事の内容も含んだ、メディアと広告の価値を正しく評価し、活用していく方法についてまとめたホワイトペーパーを2019年8月に発行しています。ホワイトペーパー「アドベリの先にあるデジタル広告コミュニケーション」は、こちらからダウンロードできます。https://www.nielsen.com/jp/ja/insights/report/2019/20190809-nielsen-digital-whitepaper-awa-2019/
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