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半導体の供給不足に頭を悩ませる自動車メーカーにとって、ブランド構築キャンペーンが重大な理由
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半導体の供給不足に頭を悩ませる自動車メーカーにとって、ブランド構築キャンペーンが重大な理由

過去1年半は、ブランドが予想をはるかに超えた形で試された期間となりました。また需要と供給の乱高下により、大きな浮き沈みが発生した時期でもありました。自動車業界にとって、今年に入ってからの販売台数の回復基調は喜ばしいことですが、昨年から発生した自動車での移動需要の高まりにより、各メーカーは生産ラインのフル稼働に必要な半導体の確保に奔走しています。半導体供給が減少する中、自動車メーカーやその広告代理店は、短期的な販促施策が再開可能になるまでの間、ブランド認知活動にフォーカスして消費者のトップオブマインドを確保する必要に迫られています。

多くの消費者が昨年のほとんどの期間を自宅やその周辺で過ごした後、2020年後半から 2021年にかけて、自家用車の消費者需要は急速に回復しました。米国商務省経済分析局の自動車販売台数報告によると、米国における3月期と4月期の販売台数はそれぞれ36万5000台、35万6000 台、対前年比26万4000台増、16万6000台増を記録しましたが、年度の後半に入り半導体不足が生産に影響を及ぼし始め、増加傾向にあった新車販売が後退しました。半導体の供給が追い付き、自動車ディーラーの在庫レベルが正常化するまでは、販売台数は落ち込み続けることになります。調査会社のIHS Markitは、自動車生産は今年の後半から回復するが、半導体不足による業界全体の生産量減少損失は 1820億ドルに上ると予測しています。

自動車業界が下半期に直面している供給不足は、おそらくそれ以上の期間に及ぶでしょう。それにより自動車メーカーはディーラーの在庫不足を懸念して、マーケティング予算を削減する可能性があります。市場の不透明感によりマーケティング予算がカットされることは多々ありますが、予算を削減したブランドは、長期的にその代償を支払うことになります。

広告の停止により失われたエクイティを回復するには、平均で 3年から5年かかると言われています。また、長期的な収益は、ブランドが広告を中止する毎に2%ずつ減少していきます。長期的な成功のためには、ブランド構築と認知度向上のためのキャンペーンが不可欠です。多くのマーケティング担当者は、ブランド構築の努力を売上への影響についての議論から除外するかもしれませんが、ニールセンのデータは、長期的なマーケティングがいかに売上成長に貢献しているかを明らかにしています。ニールセンの経験値によると、消費者向けパッケージ商品以外のカテゴリーでは認知度や検討度などのブランド指標が1ポイント上昇すると平均0.5%の売上成長をもたらすことがわかっています。

自動車の購入サイクルは比較的長いことを考慮すると、賢明なマーケティング担当者は、既に長期的なブランド構築施策の開発を進めているでしょう。供給不足に直面した自動車メーカーのマーケティング担当者による方向転換は、戦略よりもメッセージやメディアチャネルの選択が重要になります。

アッパーファネルの指標を大切にするためには、メッセージングとチャネルの間に密接な連携が必要であり、これは特にブランド構築の取り組みに当てはまります。例として、ある大手自動車ブランドのメッセージ戦略によるマーケティングの影響を見てみましょう。短期と長期の両方で影響を測定したところ、次のことがわかりました。

  • ローワーファネルのメッセージングは、アッパーファネルのメッセージングよりも短期的な効果は高いが、長期的にはあまり付加価値をもたらさない。
  • アッパーファネルのメッセージングは、短期的な成果はやや低いが、長期的には意味のある付加価値をもたらす。

この例を具体的なチャネル別に見てみると、結果はさらにわかりやすくなります。アッパーファネルのメッセージングでは、動画とオフラインのメディアは、短期的および長期的な売上を促進するのに効果的です。一方、ローワーファネルのメッセージングでは、動画以外のオンラインメディアは、長期的な売上よりも短期的な売上を促進する効果があります。この点を考慮して、自動車マーケティング担当者は、短期的には動画ブランドキャンペーンに予算をシフトすることを検討すべきです。

2020年第1四半期末の大規模な混乱を考えると、米国の自動車業界全体の広告費が大きく落ち込んだことは大方の予想通りでした。しかし、COVID-19によって米国が封鎖されてからわずか1ヵ月後に底を打った広告費は、少しずつではありますが回復し始めました。Nielsen Ad Intelのデータによると、9月には2020年1月と同等のレベルにまで広告費は戻り、年末には10億ドルを超えるまでに成長しました。

2020年後半にかけての広告費の増加は、消費者による季節購入傾向への対応であった他、パンデミックに対する消費者心理の回復という要因がありました。しかし現在の自動車在庫レベルが低いため、今年の秋には従来の自動車購入傾向に何らかの影響が出る可能性が高くなっています。そこでメーカーやディーラーが消費者の需要に応えられるようになるまで、ブランド認知度向上キャンペーンを展開することが重要になります。しかし、2021年5月期の自動車業界全体の総広告費は2019年同期の広告費の半分を少し超えたレベルでしかありませんでした。

この広告支出を見る限り、自動車メーカーは消費者のトップオブマインド獲得を目的とした施策を打っているようには見えません。事実、2021年5月期の業界全体の広告費は、2019年5月期の広告費の半分を少し超えたレベルでしかなく、消費者の関心を引き続けるための努力はあまり反映されていません。 5月期は自動車メーカーが広告を強化する時期ではないものの、秋には在庫が不十分な状態に陥ることから、メーカーは検討候補から外れるというリスクに直面します。各メーカーは在庫レベルが正常化するまでの間、継続的に消費者とのエンゲージメントを獲得、維持する必要があります。メーカー別広告費を見ると、現状の広告費は 2019時点を下回っていますが、一部のメーカーは昨年を上回る広告費を投資しています。例えば、2021年3月の日産自動車の広告費は、2019年3月の約90%となっています。また、今年の5月には、Chrysler、Jeep、Dodge、RAM、Alfa Romeo、Fiatなどの自動車ブランドを多数所有するStellantis社が、2019年5月よりも多くの広告費を投じています。

広告をやめるタイミングはありませんが、現在の市場環境ではかなり厳しい状況にあります。また、供給の問題を考えると、長期的なブランド構築戦略が販売に影響を与えることを忘れてはならない時期だと思います。そして、将来の自動車販売を左右するのは、消費者の心を掴むことなのです。ニールセンのデータによると、マーケティングはブランドエクイティの10%〜35%を占めています。これは、自動車のマーケティング担当者にとって、現在はもちろん、サプライチェーンが正常化したときにも役立つインサイトです。

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