スポーツ視聴で若年層のエンゲージメントを高めるには
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スポーツ視聴で若年層のエンゲージメントを高めるには

Sofiya Kovalova

新型コロナウイルスの感染拡大への懸念により、直前まで実施の可否や開催方法に不透明さが残っていましたが、東京オリンピック・パラリンピックは日程通りに開催されました。史上初となる世界的な感染症流行の中での開催、そして無観客実施の措置が取られるなど、異例の大会となりました。北京での冬季オリンピック・パラリンピック開幕まで残り半年となった今、東京大会は次の世界的スポーツイベントにおいて、何をどのようにおこなうべきなのかの先行事例となりました。スポーツコンテンツを提供する企業は視聴者とのエンゲージメントを高めるために、東京オリンピック・パラリンピックでの視聴者の動向を振り返り、パンデミック下のスポーツ大会の在り方の先例として、戦略立案に活かしていくことが重要になります。

若年層の興味関心向上が成功への鍵

東京オリンピック・パラリンピックの開催をめぐっては、開催直前まで様々な意見が飛び交っていましたが、開幕とともに視聴者の意識は変化し、年齢が高い世代の人ほど、開催前と比べて興味関心が高まる傾向がみられました。35歳以上では、大会開催後に興味関心が高まった人はオリンピックで31%、パラリンピックでは約25%となっていました。一方で34歳以下では、オリンピックで22%、パラリンピックでは18%が開催開始後に興味関心が高まったと回答し、年齢が高い世代と比べると約10ポイント低く、スポーツ観戦において、開催期間中にも若年層の興味関心を高めることが重要課題であることがわかります(図表1)。スポーツコンテンツを提供する企業は、視聴者のエンゲージメントを高めるために、自社が提供しているコンテンツの見直しや、若年層の興味関心を高めるために施策を修正することが重要になるでしょう。

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では、若年層の興味関心を高めるためには何ができるのでしょうか。動画配信サービスの利用者数が年々増加するなか、NHKはオリンピック・パラリンピックのインターネット上での同時配信を行いました。ニールセン モバイルネットビュー(Nielsen Mobile NetView)によると、オリンピックが開幕して最初の1週間(7月23日から29日)のスマートフォンからの1日の平均利用者数は、前週と比べてTVerで133%、NHK PLUSでは26%増加していました。 若年層はインターネット上でコンテンツを視聴する傾向が高く、スポーツコンテンツも同様の傾向が期待できます。34歳以下ではリアルタイムテレビでの観戦が最も多くなっていましたが、スマートフォンからの観戦はその次に多く、スマートフォンからリアルタイム、または試合終了後に観戦した人は23%となっていました。

各年代で興味関心が高まるきっかけとは

若年層が試合を観戦できるプラットフォームを提供することはもちろん重要ですが、エンゲージメントを高めるためには各年代の興味関心が高まるきっかけを理解することも必要です。どの年代でも、多くの人はテレビ番組やニュースサイト/新聞で見るコンテンツに影響されますが、若年層においては年齢が高い世代と比べて周りの人や自身がフォローしているインターネット上のコンテンツをきっかけに興味関心が高まることがわかりました。34歳以下において28%が「友人や知人、家族との会話」をきっかけにオリンピック・パラリンピックへの興味関心が高まったと回答していました。また、「SNSでの友人や知人などの投稿」や「SNSでフォローしているアスリートの投稿」、「投稿動画サイトでの検索結果」をきっかけにオリンピック・パラリンピックへの興味関心が高まった人が年齢が高い世代と比べて高くなっていました(図表2)。

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さらにどの年代でも、オリンピック・パラリンピックは「日本代表を応援したかった」「日本選手が活躍していたから」「日本開催だから」という理由で観戦する人が多くなっていましたが、若年層ほど、競技を理解することを重要視している傾向がみられました。35歳以上では20%が「国際大会はいつも観戦する」という理由でオリンピック・パラリンピックを観戦し、若年層と比べて高くなっていた一方で、34歳以下では「自分がそのスポーツをしている」が19%、「ルールが分かってきたから」は14%となっていました(図表3)。若年層は単に周りの人が観戦している、との理由で観戦する可能性は少なく、自分が見ている内容を理解することを重要視していることがわかります。また、図表にはありませんが、若年層ではオンラインで他の人とコミュニケーションを取りながら観戦することを楽しむ傾向があります。34歳以下の視聴者では、TwitterなどのSNSで不特定多数の人とコミュニケーションを取りながらオリンピックを視聴した人が35歳以上と比べると8倍、友人や知人がライブストリームしている動画を観ながら観戦した人は35歳以上の4倍となっていました。スポーツコンテンツを提供する企業は、若年層の興味関心を高めるために、各年代においてどのような情報が興味関心を高めるのか、そしてそれらの情報をコミュニケーションする上で最適なチャネルなどを用意しておくことが重要になります。

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デジタルネイティブである15-34歳は、自身が必要とする情報を自ら探しに行く人が多く、スポーツイベントなどの結果を確認する際にSNSを利用する割合が高い傾向にあります。SNSは、今後もスポーツイベントへの興味関心を高めるチャネルとして重要な役割を果たすことが期待できます。スポーツコンテンツを提供する企業は、こういったプラットフォームを活用することで、若年層とのエンゲージメントを高めていくことが重要になるでしょう。例えば、アスリートに試合に関連する情報を投稿してもらうことや、視聴者が競技などについて話し合うことができるオンラインチャネルを提供するなど、オンラインでの交流の場を提供することが視聴者を獲得する上で重要になるでしょう。スポーツコンテンツに対するニーズは年代によって異なることから、コンテンツを提供する企業はその違いを理解し、ニーズに応えるコンテンツを提供することが、高いエンゲージメント獲得への近道となるでしょう。