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新型コロナウイルス禍におけるデジタルコミュニケーションを考える
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新型コロナウイルス禍におけるデジタルコミュニケーションを考える

Nielsen Digital Shiro Takagi

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、世界的に消費者の行動は大きな変化が生じています。ニールセンの米国メディアチームによる最近の調査によると、消費者が自宅にいる時間が増えることにより、メディア消費が最大60%増加する可能性があることがわかっています。日本においても、広い範囲で外出自粛要請が出され、人影がまばらな繁華街の映像を多く目にするようになりました。日本よりも早い段階で都市封鎖が起きている海外の主要都市において、未だ生活がもとに戻っていない状況を踏まえると、今後もしばらくはこのような事態が継続することが予想されます。

消費者が外出を控え、長期間にわたって自宅で生活するようになったことで、デジタルメディア業界も大きな影響を受けています。実際、今後のプロモーションを全て見直すことになったというデジタル担当者の声も聞こえてきています。新型コロナウィルスの影響によって売上減少など様々な悪影響が起きる可能性が考えられますが、このような事態だからこそ、現状を正確に把握し適切に対応していくことが求められます。今回は、新型コロナウィルスによる消費者のメディア消費行動の変化についてご紹介しながら、デジタルマーケティング担当者が注意すべきポイントについて考えてみたいと思います。

生活者のメディア消費時間の増加

どの国においてもメディア消費時間の増加が確認されています。各国に共通してテレビ視聴時間の増加、特にニュースコンテンツおよびエンターテイメントコンテンツの視聴時間が増加しています。視聴時間の増加は日本のデジタルコンテンツ視聴においても同様の傾向が出ています。日本においては2月後半より小中学校の休校や在宅勤務をする人が増え始め、その結果パソコンからのエンターテイメントコンテンツの視聴時間が変化の起き始める前の平均時間よりも増加していました。4月以降では、外出を控える人がさらに増加しているため、メディアの消費状況はより大きく変化していくことが予想されます。

このようなメディア視聴時間の増加は、これからのメディアプランを考える上で、以下のような様々な変化を考慮する必要があります。

視聴者層の変化

これまでと比べると、特に学生や会社員の在宅時間が大きく増えているため、利用しているメディアの変化は属性ごとにも大きく異なっています。これまでとは違った層にリーチできるようになっている可能性や、これまでと同じメディアプランでは効率的にターゲットに対してリーチできなくなっている可能性などが考えられます。

視聴時間の変化

これまでは学校や仕事で日中外出するための通勤・通学に費やされていた時間にも自宅で自由にコンテンツを視聴できる人が増加しているため、テレビのプライムタイムやデジタルの利用時間のピーク(これまでは8時~9時ごろ)がもっと早い時間から始まっていると考える必要があるかもしれません。また、これまでとは異なったモーメントでコンテンツを視聴していることを想定する必要があるでしょう。

視聴コンテンツの変化

各国でニュースやエンターテイメントコンテンツの視聴時間が増加している傾向が見られていますが、外出規制が長引いてくると視聴するコンテンツが更に変化していく可能性も考えられます。芸能人やスポーツ選手などによるSNS上のライブ配信など、こういった時期だからこそ出てきた新しいコンテンツも登場しています。今求められるコンテンツとは何なのかを、随時アップデートしていく必要があるでしょう。

デジタル広告出稿量の減少

一般的に不況や今後の経済が不透明な時には、広告出稿予算は停止・延期・削減されることが多いですが、多くの国で実際に3月以降の広告出稿量が減少している傾向が見られています。欧州で新型コロナウィルスの影響が大きく出ているイタリアやイギリスと同様、日本においても3月の初旬からデジタル広告出稿量が昨年同時期と比べて減少していました。

Digital Japan

もちろん、今回の事態はデジタルだけにとどまらず、ブランド担当者としては、外出規制に伴う販売数への影響等から今後の広告予算の見直しや、屋外広告の効果が減少するために予算のリアロケーション、マイナスイメージのニュースが増えたことで広告内容の見直しや出稿先の変更、など様々な変更を行っているところでしょう。しかし、ブランドとしてのコミュニケーション活動までも自粛していったとしたら、コロナ禍が明けた時にこれまでのポジションを維持できているでしょうか。中長期的な視点で、新型コロナウイルスが収束した時にスタートダッシュがきれるようにするためにも、今できる最大限のコミュニケーション活動を行っていくことが各ブランドに求められます。

日本ではまだあまり見られませんが、海外ではソーシャルディスタンスを訴える広告を出稿したり、手の洗い方を紹介するコンテンツを企業が提供するなど、ブランドとして社会に貢献できる情報発信をしている事例が多く見られます。また、社会全体として出稿量が減少するということは、広告出稿単価の下落やシェアオブボイスの向上など、デジタル広告を配信する上ではメリットが増えることが予想されます。ブランド担当者にとっては、ネガティブなことが多い状況かもしれませんが、不安を抱えている消費者に寄り添ったコミュニケーションをとっていくことで、これまで以上に消費者との距離を縮めるチャンスとして捉えることもできるのではないでしょうか。