昨年COVID-19の影響で消費者のデジタルメディアの活用が進んだことにより、今年も重点的にデジタルシフトに取り組んでいくという企業は多いでしょう。各企業のデジタル広告の重要性がこれまで以上に高まる一方で、この先も厳しい経済動向が予想されるため、広告予算が再び抑制される可能性も考えられます。このような環境の中、より効率的なメディアプランの立案を求められる広告担当者も多いでしょう。効率化を図るためには、「広告が届けたい相手にどれだけ届いたか(=リーチ)」という観点と、「届いた広告が態度変容を起こしたか(=ブランドリフト)」という観点で、それぞれ調査を実施することで改善を図ることが可能です。例えば、ブランドリフトの向上を図るための判断材料の一つとして、デジタル広告においてはクリエイティブ評価調査が実施されるケースがあります。具体的には、広告出稿前にクリエイティブの修正やメディアやフォーマットごとに適切なクリエイティブ選定の検討に活用したり、広告出稿中には配信費用配分の変更をおこなったりといった活用事例があります。
このようなクリエイティブ評価調査はブランドリフト効果の最大化に向けて意義のあるものですが、適切な調査設計ができていないと、適切ではない調査結果に基づいた誤った判断によって実際の配信では期待した効果が得られない可能性があり、調査設計には充分に注意を払う必要があります。
今回は、クリエイティブ評価調査の設計において重要なポイントをご紹介します。
クリエイティブ評価調査の設計では、2つの重要なポイントがあります。ここからそれぞれのポイントについてご紹介します。
① 普段のデジタルメディア利用に近い環境で広告クリエイティブを評価してもらうこと例えば、実際にソーシャル・ネットワークサービスを利用している時にはユーザーの投稿の間に広告が表示されたり、また動画広告の場合であれば数秒視聴するとスキップボタンが表示されたりします。しかし、クリエイティブ評価でよく活用される一般的なオンライン調査では、調査画面の中で広告クリエイティブのみを表示したり、動画広告を最後まで強制的に視聴してもらったりするケースがあります。このような日常のデジタルメディアの利用時と異なった状態で広告に接触したユーザーにとっては、広告クリエイティブを評価する際の意識も日常での広告接触時とは異なる場合があると考えられます。このような調査は、もともとテレビCMのクリエイティブ評価のために実施していたケースも多く、テレビCMのフォーマットに対しては大きな問題はなかったと考えられますが、デジタル広告には様々な広告フォーマットや広告掲載面での広告接触体験の違いがあるため、それらを考慮したなるべく日常のデジタルメディア利用に近い環境で広告に接触してもらい、その効果を測定する必要があると考えます。このように広告接触環境や広告フォーマットの違いを考慮しなかったことにより、調査では確認できた効果を実際の広告キャンペーンでは得られなかったという例を見ることがあります。例えば、調査ではブランド認知が高く出ていたにも関わらず、実際の広告キャンペーンではその効果が確認できないケースなどがあります。こういったケースでは、動画広告の前半ではブランド名が分からず、最後まで視聴することでそれが分かる内容だったことが原因の一つである可能性が考えられます。調査では最後まで強制的に視聴させられる環境であったのに対して、実際の配信では完視聴保証のメニューでなかったため、最後まで視聴されずにスキップしてしまうユーザーが多かったことで、調査結果とのギャップが生まれてしまった可能性があります。このような理由により、なるべくユーザーの普段のデジタルメディア利用時に近い環境で広告クリエイティブに接触してもらう環境で評価することが重要です。
② 複数のメディア間で調査結果を比較できること①で説明してきたような課題を解決する方法として、キャンペーン中に実際に広告が表示された人と、表示されなかった人に対して、アンケートを実施する方法があります。その方法としては、第三者調査機関の調査用タグを用いてメディア横断的に実施するものと、単一メディア内で当該メディア自身が実施するものがあります。第三者の調査機関が実施する場合は、計測を受け入れているメディアであれば、メディア間で横並びの比較が可能ですが、第三者調査機関の計測を受け入れていないメディアもあります。そういった第三者調査機関の計測を受け入れていないメディアでも、メディア独自の調査を提供しているケースもありますが、メディアごとに質問内容や質問数に制約があり、さらにその条件がメディア間で異なっているケースがあります。そうすると、例えば1つの広告クリエイティブを複数のメディアに出稿した場合、本来であれば同一の質問内容で調査を実施すべきところ、一部ではそれが実現できないことで、メディア間の結果を横並びで比較できないケースが発生しています。複数のメディアに出稿する場合のクリエイティブ評価調査においては、メデイアごとの調査仕様の制約を受けずに、調査目的に応じて柔軟に質問を横並びで実施できることが重要です。
クリエイティブ評価調査には、ここまで紹介してきたオンラインアンケート形式以外にも、脳波や目の動き、顔の表情を測定し、解析するものなど、より実態に近い効果を把握するための手法が各社より提供されています。
今回は、これまでに述べた2つのポイントの問題点をカバーしたソリューションの一例として、ニールセンが提供する「デジタル広告評価(プレイスメント/クリエイティブ)」(略称:DCE)をご紹介します。このソリューションは以下のような特徴を持っています。
- テスト環境を利用することで普段のユーザーエクスペリエンスに近い状態での評価が可能
一般的なオンライン調査画面の中でクリエイティブを表示するのではなく、広告が出稿されるメディアを再現したテストサイトで、普段デジタルメディアを利用しているのに近い環境で広告を表示させることができます。デジタルメディアはFacebook、Instagram、Twitter、YouTube、TikTokをはじめとした多くのものに対応しています。例えばソーシャル・ネットワークサービスであれば、回答者に対していつもと同じように利用するよう依頼し、回答者が画面をスクロールして閲覧している途中に評価したいクリエイティブを表示させます。そうすることで、日常の利用時に近い状態での広告接触となるため、クリエイティブ評価調査の結果と実際の配信時の効果の間にギャップが生まれる可能性を低減できます。 - 複数のメディア間で調査結果の比較が可能
テストサイトで調査を実施するため、メディア独自の調査の仕様による質問内容や質問数の制約を受けません。そのため広告の目的に応じて柔軟に質問内容を調整することができます。もちろん複数のメディア間で同一の質問内容の聴取も可能なため、調査結果の横並びの比較も容易です。
ブランドリフト効果最大化に向けたクリエイティブ評価調査の重要なポイントについてご紹介してきました。クリエイティブ評価の実施にあたっては、広告の目的に応じて最適な調査設計や質問内容が異なる可能性があります。そのためキャンペーン毎に最適な設計を検討して実施することが重要であると考えます。