ブランディングキャンペーンを成功させるためには、ブランドメッセージとそれを伝えるためのマーケティング戦略に一貫性が求められます。それらを実現することでブランドとして継続的な成長を実現することが可能になります。マーケティング担当者としては、ブランディングキャンペーンの結果をより深く理解するために適切な指標を使って結果を計測することが重要となりますが、近年はその手段としてブランドリフト調査が注目されています。ブランディングキャンペーンがどのようにターゲットオーディエンスに影響し、ブランドメッセージがどれだけ伝わったかを把握するためにこのような調査を活用するマーケティング担当者も増えてきています。そのような中で、担当者によってはブランドリフト効果の把握だけでなく、その上位ファネルにある広告のリーチやフリークエンシー、オンターゲット率がブランドリフトに与える影響を考える必要があるのではないでしょうか。
ブランドリフトの指標を分解していくと、リーチとフリークエンシー、オンターゲット率はそれぞれブランディングキャンペーンにおいて重要な役割を持ち、それらを中間指標として計測し、改善を図っていくことで最終的な目標であるブランドリフトを実現することが可能になります。例えばフリークエンシーに注目すると、過剰な頻度の広告接触は、消費者がブランドを嫌うきっかけになる可能性があります。実際に「ニールセン・ビデオコンテンツ アンド アド レポート 2021(Nielsen Video Contents & Ads Report 2021)」によると、動画広告視聴後にブランドを嫌いになった人の63%は、過剰なフリークエンシーがきっかけであると回答しています。適切なクリエイティブは間違いなくキャンペーン成功の鍵となりますが、同様にリーチやフリークエンシー、オンターゲット率もキャンペーンの成功を大きく左右します。キャンペーン内容によってリフトさせたいブランド指標は異なりますが、各指標をより向上させるために、マーケティング担当者は次のことを把握することが重要になります。
1.キャンペーンメッセージは正しいターゲットに届いていますか?
当たり前のようですが、クッキーレス化が進んでいる中で、実際にキャンペーンが正しいターゲットに届いているかを把握することの重要性は増してきています。どのようなキャンペーンにおいても、クリエイティブはターゲットに合わせて制作されますが、そのクリエイティブが正しいターゲットに届くことで初めてキャンペーン効果を果たすことができます。例えば、あるブランドが動画広告を使ってキャンペーンを実施した際に、キャンペーン全体のオンターゲット率を改善するために、オンターゲット率の高いメディアに広告費用のアロケーションを変更しました。その結果、キャンペーン全体のオンターゲット率が改善しただけでなく、動画広告の再生完了率の改善も見られました。動画のクリエイティブは特定のターゲットに向けて制作されていることから、クリエイティブのメッセージに対して共感する可能性が高くなり、その結果、最後まで動画を視聴する人の割合が増加することが想定されます。反対に、ターゲット以外が動画を視聴した場合には、クリエイティブはその人が共感できる内容に作られていないため、スキップしてしまう確率が高くなります。正しいターゲットにキャンペーンメッセージがリーチし、広告に共感する接触者が増加することで最終的なキャンペーン目標に近づくことが可能になります。
メディアプランの検討段階において、担当者はターゲットオーディエンスにリーチするために最適なメディアを選定していることは間違いないでしょう。しかし、適切なプラットフォームで明確なターゲティングが設定されている場合でも、広告が意図したターゲットに届いているとは限りません。さらに、サードパーティクッキーなどのデジタル識別子の使用制限によって、広告を配信する際に使用できるデータが限られ、今までのように詳細なターゲティングの設定も困難になるでしょう。若い女性の認知向上を目的としたスキンケアのキャンペーンにおいて、インプレッションが男性にリーチしていては、キャンペーンを成功させることはできません。そのため、実際に配信したインプレッションが意図した人に届いているかを計測し、プランと結果に相違が無いか把握することによってキャンペーン全体の効果を最大化することが重要となります。
2.接触回数は適切ですか?
広告想起は、接触回数が増加するのとともに向上する傾向がある一方で、接触回数が多すぎる場合には、ブランドを嫌いになるきっかけとなり、ブランド毀損のリスクも高まります。効果的なキャンペーンを実現するためには、インプレッション数を増やすことでリーチを拡大するだけでなく、キャンペーン目的や広告フォーマットに合わせて適切なフリークエンシーを設定する必要があります。例えば、バナー広告を使う場合は接触頻度が高いことで認知されやすくなる一方で、動画広告で何度も広告に接触した場合はブランドイメージが損なわれる可能性があります。メディアプランを選定する際に各メディアでのフリークエンシーキャップを設定することが多いですが、キャンペーン全体を通してその目標を実際に達成しているのかを検証する必要があります。特にクッキーレス時代においては、広告に接触した人がユニークであるかを検証することが困難となり、過剰に広告に接触してしまっている可能性もあるでしょう。そのため、キャンペーン全体を通して何人の人が何回広告を観たかを計測することによって、実際のキャンペーン結果が目標値からかけ離れていないかを検証し、適切な調整を行っていくことでブランドスコアを改善することができます。
最後に
キャンペーン結果を評価する上で、多くのマーケティング担当者がブランドリフト調査の結果を注視するようになっている中、このブランドリフトスコアを改善していくためにもリーチやフリークエンシー、オンターゲット率などの計測も同様に重要になっています。これらの指標単体の結果を把握するだけでなく、マーケティング担当者はそれぞれの指標を計測することで各指標がブランドスコアにどのような影響をもたらしているのかを理解する必要があります。これらを中間指標として使用し、キャンペーン途中で調整したり、次回のプラニングに活用したりすることで、最終的なゴールにより近いKPIであるブランドスコアの向上につなげることができるのではないでしょうか。