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多様なデジタルメディアから最適な広告の配信先を選定するには

1 minute read | ニールセン デジタル アナリスト マ・ピンチュアン | March 2021

先日発表された「2020年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は前年比105.6%、そのうち「運用型広告は1兆4,558億円(前年比109.7%)」となっており、また、その背景については「巣ごもり需要によってSNSやEC、動画配信サービスへの接触機会も増え、大手プラットフォーマーを中心とした運用型広告の需要が高まった」とコメントされています(出典:株式会社電通 ニュースリリース 2021年2月25日)。そして、デジタルメディアには視聴者の需要に伴って多種多様なサービスが現れ、短尺動画からポッドキャスト、ライブ配信まで、広告担当者がデジタル上で広告コミュニケーションをする際の新しい選択肢が登場してきています。それに伴い、様々なデジタルメディアの中から、迅速にかつ適切に広告の配信先を選択することがより難しくなってきています。過去の配信結果に基づいて、結果の良かったメディアだけを選定するという方法もありますが、過去の配信結果はメディアプランニングにおいて重要な情報ではあるものの、配信先を固定化することにより、結果として機会損失や一部の広告在庫への集中による価格の上昇といったリスクが発生する可能性があります。今回のメルマガでは、そのリスク並びに、回避方法をご紹介します。

なぜ広告配信先の固定化は良くないのか?

まず、機会損失のリスクについてご説明します。広告担当者は、メディアプランニングの段階において、広告キャンペーンの目的やターゲットに基づき、ターゲットと効果的にコミュニケーションが取れる方法を検討したり、広告の配信先を決めたりすると思います。

アパレルブランドA社の新しいキャンペーンのメディアプランがあるとします。これまでA社は、18〜34歳の女性をターゲットに大手デジタルメディアで広告配信をしてきました。この春A社は、スーツなど新社会人向けのファッションブランドのリリースに伴い、デジタルメディアでよりターゲットを絞った18〜25歳に、デジタルでキャンペーンを実施することになりました。新しいブランドのため、広告キャンペーンを通じて認知度や熟知度、購入意向につなげることを目的に、企画の一つとしてタイアップ記事広告を活用することにしました。

A社は、これまで18〜34歳の消費者をターゲットに配信した広告のリーチ計測実績から、18〜34歳の消費者に高い割合で広告が届いたデジタルメディアを特定することができます。ただしそれだけでは、今回の広告配信先の検討はまだ完了していません。新しいターゲットである18〜25歳の消費者に出会う場所として、もっと適切なメディアがほかに存在していないかを考える必要があるからです。例えば、若い世代の間で人気がある短尺動画のサービスや、季節的に訪問が増える求職・転職サイト、不動産サイトなどが候補として上がってくるかもしれません。また、タイアップ広告の企画を考慮すると、ターゲットの年齢層に該当する利用者数だけでなく、エンゲージメント指標も含めてメディアを評価し選定する必要があります。ターゲットにじっくりコンテンツを読んでブランドを理解してもらい、熟知度や購入意向を向上させたいからです。広告担当者は、このように広告の配信先を固定せずに、新しいキャンペーンのターゲットや企画などに基づいて、新しいデジタルメディアで広告を出稿する可能性も含めてメディアプランニングを行う必要があります。そうしなければ、より効果的にターゲットとコミュニケーションできるデジタルメディアを活用する機会を失ってしまう可能性が考えられます。

次に、広告在庫確保のためのコスト増やシェアオブボイス(SOV)が下がるリスクについてご説明します。A社を例に考えると、A社が18-34歳をターゲットに広告配信する際に活用してきた大手デジタルメディアは、他の会社も頻繁に活用するメディアだったとします。その場合、他社の出稿との兼ね合いによっては在庫が不足したり、価格が高騰したりする可能性があります。また、消費者の印象度合いの観点から、同じ広告掲載面に多数の会社が広告を掲出するとなると、個々の広告のSOVに影響し、その結果、消費者の広告への印象が薄れてしまう恐れがあります。

最適なデジタルメディアを選定するには

多くのメディアが存在している中、迅速かつ統合的に評価しプランニングすることは簡単なことではありません。そのため、メディアを横断的に比較できる共通指標が必要となります。以前のメルマガでメディアの差別化の観点から、メディアを横並びで比較できる共通指標のメリットについてご紹介しましたが、広告主がメディアを選定する際にもそのような共通指標を活用することができます。

例えば、上記18〜34歳の消費者をターゲットにしたキャンペーンの場合、候補には大手メディアのA社とB社に加えて、新興メディアのC~E社があるとしましょう。図表1で示したように、ターゲットの利用者数や含有率を揃えて各社を横並びで評価することができます。この場合では、ターゲットの利用者数で言えばメディアA、含有率で言えばメディアC~Eを配信先の候補に追加するということが検討できるようになります。

Media usage of 18-25 ages

また、リスクのところでご説明したエンゲージメント指標の観点でも、横並びで比較できる指標があることによってメディア選定の際に検討が可能になります。キャンペーンを通して熟知度と購入意向を高めたい場合などは、ターゲットの訪問頻度や滞在時間など、エンゲージメント指標を評価した上で、メディアの選定を行っていくと良いでしょう。

COVID-19がもたらした新常態に伴い、デジタルの世界は大きく変化してきています。広告配信においては、各フェーズで適切なメディアデータを活用することによって、広告担当者は常に多様で新たな視点を持ち、広告キャンペーンの目的やターゲットに応じた効果的なメディアの活用ができるでしょう。

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